
薬剤師として働く中で自分の市場価値や将来のキャリアプランに悩んでいませんか。特にライフステージの変化が訪れやすい20〜30代にとって、年収は切実な問題です。
この記事では大卒薬剤師の平均年収や勤務先別の年収、具体的な年収アップの方法まで網羅的に解説します。記事を読めば、将来に向けた具体的なキャリアプランを描くヒントが見つかります。
薬剤師が年収を上げるにはスキルアップや昇進に加え、待遇の良い職場への転職も有効な手段です。自身のライフプランに合わせたキャリアを早期に設計することが、高年収への近道です。
大卒薬剤師の年収の基本情報

大卒薬剤師の年収について以下の内容を解説します。
大卒薬剤師の年収は日本の給与所得者全体の平均と比較して高水準。薬剤師は専門知識を要する国家資格であり、社会からの安定した需要があるため、収入も高くなる傾向があります。
大卒薬剤師の初任給
大卒薬剤師の初任給は月給で25~30万円、年収は350~450万円が一般的な相場です。初年度のボーナスは査定期間が短いことから、満額支給されないケースも多くあります。
初任給の内訳は基本給に加えて以下の手当が含まれます。
- 薬剤師手当
- 住宅手当
- 通勤手当
初任給に幅があるのは勤務先や働く地域によって給与水準が大きく異なるためです。
ドラッグストア、調剤薬局、病院の順に初任給が高くなる傾向があります。薬剤師が不足している地方やへき地では人材を確保するために、都市部よりも初任給が高く設定されています。
大卒薬剤師の平均年収

厚生労働省の調査によると大卒薬剤師の平均年収は約594万円です。年齢が上がるにつれて給与も高くなる傾向があり、20代後半では約480万円、30代では500~600万円台へ上がります。
男女別の大卒薬剤師の平均年収は男性が約647万円、女性が約561万円です。性別による平均年収の差は管理職の割合や勤続年数の違いが影響しています。
大卒薬剤師の初任給は他の職業に比べて高い傾向にありますが、年収の伸びは比較的緩やかです。
» 【薬剤師の年収】性別や年齢・地域・業種ごとに詳しく解説!
大卒薬剤師と他業種の年収比較
大卒薬剤師の年収は他のさまざまな職種と比較しても高い水準です。専門性の高い国家資格が必要な仕事である点が年収に反映されているからです。
大卒薬剤師の平均年収は日本の給与所得者全体の平均年収である約458万円を100万円以上も上回っています。
大卒全体の平均年収と比べると、男性(約584万円)とほぼ同じで、女性(約424万円)よりは大幅に高い水準です。
他の専門職の平均年収は以下のとおりです。
- 医師:1,429万円
- 弁護士:971万円
- システムエンジニア:550万円
- 看護師:508万円
- 臨床検査技師:497万円
薬剤師は給料の上がり方が緩やかで、長期的には他の職種に年収で追い抜かれてしまう可能性も。とはいえ、薬剤師の年収は全体的に見ると恵まれています。
【勤務先別】大卒薬剤師の年収

薬剤師の年収は勤務先によって大きく異なります。以下の勤務先別に大卒薬剤師の年収を紹介します。
調剤薬局
調剤薬局の平均年収は450~650万円で、大卒薬剤師の標準的な水準の年収です。
調剤薬局の初任給は病院よりも高く、ドラッグストアよりは低くなっています。
求人数が多くパートや時短勤務などのさまざまな働き方ができるので、子育て中の方などにも調剤薬局はおすすめの職場です。
大手チェーンの調剤薬局は福利厚生が手厚い反面、昇給は緩やかで、中小薬局は給与交渉がしやすい特徴があります。
年収を上げるためには管理薬剤師やエリアマネージャーなどの役職になることや、認定薬剤師の資格を取得することが有効です。
調剤薬局での年収アップの目指し方を解説した記事もあります。下記リンク記事をあわせてご覧ください。
» 調剤薬局で働く薬剤師が年収を上げる方法4選を解説!
病院

病院で働く大卒薬剤師の年収は400~550万円で、他の職場と比べると少し低い傾向にあります。夜勤や当直の手当はあるものの基本給が低いため、年収が上がりにくいと感じる方も多くいます。

ですが、病院勤務は専門性を高められる点が大きな魅力です。
チーム医療の一員としてさまざまな病気の患者さんに関われるため、薬剤師のスキルを磨きたい人に、病院はぴったりの環境。
専門薬剤師のような、より高度な資格を目指すキャリアパスも描けます。
福利厚生が手厚い点も病院で働くメリットです。産休や育休の制度が整っており、院内に保育所がある場合も多いため、子育てと仕事を両立しやすい環境が整っています。
将来的に薬剤部長などの管理職へ昇進すれば、大幅な年収アップも期待できます。
ドラッグストア
ドラッグストアで働く大卒薬剤師の年収は450~750万円で、調剤薬局や病院よりも高い傾向にあります。
ドラッグストアの年収が高い理由は調剤業務だけでなく幅広い仕事を担当するからです。
ドラッグストアで働く薬剤師の業務内容は、以下のとおりです。
- 調剤業務
- OTC医薬品や健康食品の販売
- 品出しやレジ対応
- お客様からの健康相談の対応
土日祝日や夜間勤務があるシフト制が基本ですが、パートやアルバイトの時給も高く設定されています。
時短勤務など柔軟な働き方を選べる企業が増えている点も魅力のひとつです。
製薬会社

大卒薬剤師が働く場所の中でも高い年収が期待できる製薬会社の平均年収は、500~1,000万円。
他の職場に比べて給与水準が高い理由は、会社の利益が社員の給与に反映されやすいからです。
MR(医薬情報担当者)は営業成績に応じたインセンティブ(成果給)がつくので、20代でも実力次第で高い収入を目指せます。
研究職・開発職は新薬開発などの専門性が高い仕事である分、安定して高い給与を得られます。
製薬会社は給与だけでなく住宅手当や家族手当などの福利厚生が手厚い点も魅力です。
公務員薬剤師
大卒公務員薬剤師の平均年収は500~700万円です。公務員の給与は、法律で定められた「俸給表」という給与の一覧表にもとづいて決まります。
勤続年数に応じて着実に給料が上がっていくので、公務員薬剤師は景気に左右されにくい安定した収入が見込めます。
公務員薬剤師の初任給は民間の企業に比べて低いですが、ボーナスや各種手当はしっかりと支給されるので安心です。
公務員薬剤師は国家公務員と地方公務員に分かれます。公務員薬剤師の勤務先は国家公務員の場合は麻薬取締官などの国の機関、地方公務員の場合は保健所や公立病院などの地方自治体です。
業務内容は病院での調剤業務だけでなく、薬や食品の安全を守る仕事や、感染症対策などの公衆衛生に関わる行政的な仕事もあります。
残業が少なく産休・育休や時短勤務など制度も充実しているため、子育てをしながら働き続けたい薬剤師から人気の勤務先です。
公務員薬剤師になるためには公務員試験に合格する必要があります。採用される人数が限られているため、公務員薬剤師の競争率は高くなっています。
» 公務員薬剤師の平均年収とメリット・デメリットを解説
大卒薬剤師が年収を上げる方法

大卒薬剤師が年収を上げる方法を以下に紹介します。
資格取得やスキルアップをする
専門性を証明する資格の取得や、新しいスキルを身に付けることは年収を上げるための確実な方法です。
専門知識を持つ大卒薬剤師は資格手当の対象になったり、より高度な業務を任されたりするからです。自分の市場価値を高めることで、収入アップにつながります。
年収アップにつながる代表的な資格やスキルは以下のとおりです。
- 専門薬剤師・認定薬剤師
- 研修認定薬剤師
- 在宅医療に関するスキル
- 漢方薬・生薬認定薬剤師
- ケアマネジャー(介護支援専門員)
- 語学力やWeb関連スキル
自分の興味がある分野や、将来のキャリアプランに合ったスキルを身に付けることが、収入アップを実現する鍵となります。
職場内での昇格を目指す

現在の職場で昇格を目指すことも、年収を上げる方法のひとつです。
管理薬剤師や薬局長、エリアマネージャーなどの役職に就くと、役職手当による給与アップが期待できます。
昇格には日々の業務で着実に実績を積み、周囲からの信頼を得ることが欠かせません。責任ある立場を任されることで給与面でも高く評価されます。
昇格への意欲や能力をアピールするには、以下の主体的な行動が効果的です。
- 後輩指導・新人教育
- 業務改善・勉強会の企画
- 上司との面談
- 評価制度の把握・計画
日々の積み重ねと積極的な姿勢が着実なキャリアアップと収入アップにつながります。
待遇の良い職場に転職する
現在の職場で大幅な昇給が見込めない場合、より待遇の良い職場へ転職することは年収を上げるための有効な手段です。
勤務する企業や地域によって大卒薬剤師の給与水準は異なるため、自分に合った職場を見つけることで収入アップを実現できます。
転職の候補先として、年収が高いドラッグストアや製薬会社、薬剤師が不足している地方の薬局がおすすめです。
転職先を選ぶ際は月給や年収だけでなく、年間休日数や残業時間の実態、時短勤務制度や託児所の有無などの条件も確認しましょう。
大卒薬剤師に向いているキャリアパス

大卒薬剤師が年収アップを目指すには、将来を見据えたキャリアプランが重要です。大卒薬剤師に向いているキャリアパスを以下に紹介します。
薬剤師の資格や知識は調剤業務以外にも多くの分野で活用できます。
研究職や開発職
薬剤師の専門知識を生かして医療の発展に直接貢献できるキャリアパスは、研究職や開発職です。研究職や開発職は新しい薬や技術を生み出す最前線に携われるので、大きなやりがいを感じられます。
研究職や開発職は調剤薬局や病院よりも年収水準が高い傾向です。勤務先は製薬会社や化学・食品メーカー、大学などさまざまです。
薬剤師の知識が求められる職種は幅広く、主に以下の仕事があります。
- 基礎研究
- 臨床開発(CRA)
- 品質管理
- 薬事申請
土日祝日休みが多く、フレックスタイム制や在宅勤務を導入している企業もあります。
研究職や開発職はワークライフバランスを重視したい方におすすめです。
マネジメント職

薬剤師の現場経験を生かせるマネジメント職は、キャリアアップを目指すうえでおすすめの選択肢です。
年収は薬局長で年収600〜800万円、エリアマネージャーでは800万円以上を目指すことも可能です。
マネジメント職は以下の業務を担当します。
- スタッフの採用・育成
- シフト管理
- 売上・在庫の管理
- 地域の医療機関との連携
薬局長やエリアマネージャーなどの役職に就くと、売上の管理など責任範囲が広がる分、高い年収が期待できます。
マネジメント業務を通じてリーダーシップやコミュニケーション能力、問題解決能力などのスキルが自然と身に付きます。
マネジメント職は自分で判断して仕事を進められるため、子育て中の方でも柔軟に働ける点がメリットです。
独立開業
独立開業は薬剤師としての経験を生かし、経営者として成功を目指せる魅力的なキャリアパスです。
年収1,000万円超えも可能で、経営手腕によっては収入に上限がありません。
独立開業すれば自分の理想とする薬局を経営できるため、やりがいを感じられます。経営が軌道に乗れば、子育てやプライベートと両立しやすい柔軟な働き方を自分で設計できるのも大きなメリットです。
開業の方法は新しく薬局を立ち上げるだけではなく、M&Aやフランチャイズに加盟するなどの選択肢があります。
独立には薬剤師の知識の他に、人事や会計、マーケティングといった経営者としての幅広いスキルが求められます。開業には数千万円規模の資金が必要になる場合が多く、リスクがある点は理解しておきましょう。
大卒薬剤師の年収に関するよくある質問

大卒薬剤師の年収に関するよくある質問は以下のとおりです。
大卒薬剤師が年収1,000万円を目指すにはどうしたら良い?
大卒薬剤師が年収1,000万円を目指すことは夢ではありません。今の職場や働き方にとらわれず、キャリアの選択肢を広げることが重要です。
年収1,000万円を目指すための道として、以下の方法が考えられます。
- 製薬会社への転職
- 薬局開業・経営
- ドラッグストアでの昇進
- コンサルタント
- 副業
- 複数薬局の経営・掛け持ち勤務
薬剤師としての専門知識や経験は、調剤業務以外にもさまざまな分野で高く評価されます。年収の高い職種への挑戦や経営者への転身により、大幅な収入アップが期待できます。
自分の興味や得意なことに合わせて、将来のキャリアプランを考えてみましょう。
» 薬剤師で年収1,000万を超える職場と給与を上げる方法を解説!
結婚・出産後も年収は維持できる?

結婚や出産を経ても、薬剤師は年収を維持しやすい職業です。薬剤師は専門性が高く全国的に人手不足なため、ライフステージの変化に合わせて働き方を選びやすいからです。
薬剤師はパートや派遣でも時給2,500円以上の求人が多く、ブランクがあっても復職しやすいメリットがあります。
子育てに理解のある職場や育児をサポートする制度が整っている職場を選ぶことが、仕事と家庭を両立させる鍵になります。
休職期間中に認定薬剤師などの資格を取得すれば、復職後に出産前以上の年収を得ることも可能です。
海外で働く薬剤師の年収は?
海外で働く薬剤師の年収は日本よりも高い傾向にあります。国によっては薬剤師の専門性が高く評価され、給与水準に反映されているからです。
薬剤師の年収を以下の国別に紹介します。
- アメリカ:約1,800万円
- カナダ:約1,100万円
- オーストラリア:約1,000万円
海外で働く薬剤師の年収は魅力的ですが、海外では日本の薬剤師免許は使えません。
海外で働くには、現地の薬剤師免許取得が必要です。高い語学力や、国によっては大学院の卒業資格が求められるなど、薬剤師として海外で働くためのハードルは高くなっています。
大卒薬剤師が年収を上げるには将来を見通したキャリアプランが大切

大卒薬剤師が年収を上げるためには、将来を見据えたキャリアプランの設計が重要です。
薬剤師の年収は勤務先や役職によって大きく変わるため、現状維持では大幅な収入アップは期待できません。
年収を上げるためには理想の働き方や目標年収を明確にし、目標達成に必要なスキルや資格の習得を計画してください。

昇進や転職、独立開業などの選択肢を比較検討しましょう。
ライフイベントも考慮した長期的な視点でキャリアプランを柔軟に見直すことが年収アップへの近道です。
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