
- 昔は薬剤師不足で引く手あまただったのに、最近の求人って条件厳しくない?
- 育休明けで復職したいけど、ブランクがあると採用されるか心配…
- 転職したいけど、今の市場で本当に良い職場が見つかるのかな?
薬剤師数は増加の一途をたどり、一部の地域では薬剤師が飽和状態に突入するような時代になりました。それに伴い、薬剤師の転職市場は大きく変化しています。
残念ながら、薬剤師の売り手市場は過去の話です。業界のニーズを考えながら転職活動を進めなければ内定はもらえません。

そこで今回は、現在の転職市場の現状と具体的な転職活動のアドバイスを詳しく解説します。
この記事を読むことで、転職の難易度が上がった薬剤師業界において転職成功する人、苦戦する人の違いや求められる薬剤師像が分かります。
- 薬剤師の転職市場が厳しくなっている背景と具体的な理由
- 転職に苦戦する薬剤師の共通的な特徴と改善点
- 転職市場で評価される薬剤師のスキルと経験
- 転職成功率を高めるための具体的な戦略と準備方法
- 薬剤師転職に特化したエージェント選びのポイント
- 転職活動を成功に導くための実践的なアドバイス
薬剤師の転職が厳しい理由

はじめに、薬剤師の転職が厳しい理由について詳しく解説します。
近年、薬剤師の転職市場は以前と比べて厳しさを増しています。かつては薬剤師不足が叫ばれ、転職は比較的容易でしたが、状況が大きく変化しています。
薬剤師の数が増えている
最も大きな要因は、薬剤師の数が増えていることです。毎年9,000人ほどの新たな薬剤師が誕生している一方、リタイア・退職者は多くありません。そのため、薬剤師数は右肩上がりで増え続けています。
厚生労働省の統計によると、薬剤師免許登録者数は2022年時点で約32万人です。以下の表に薬剤師数の年次推移をまとめました。
薬剤師数 (増減率) | 人口10万人対 | |
---|---|---|
2014年 | 288,151人 (…) | 226.7人 |
2016年 | 301,323人 (4.6%) | 237.4人 |
2018年 | 311,289人 (3.3%) | 246.2人 |
2020年 | 321,982人 (3.4%) | 255.2人 |
2022年 | 323,690人 (0.5%) | 259.1人 |

人口10万人あたり、薬剤師は約260人いる計算です。
特に都市部では、薬剤師の供給が需要を上回る状況が顕著であり、売り手市場から買い手市場へと転換しています。
薬剤師数は充足していることから、雇用者はより優秀な人材を確保するために厳しい選考を行うようになりつつあります。
そのため、転職希望者はより高いスキルや経験など、ほかの薬剤師と差別化できる能力が求められるようになりました。
調剤薬局の数が減っている
調剤薬局の数が減っていることも薬刺しの転職を厳しくしている理由にひとつです。大手調剤薬局チェーンによる中小薬局の買収や統合、経営効率化を目的とした店舗の統廃合が進んでいます。
2021年の調剤薬局数は約6万店舗でしたが、ここ数年は微減傾向にあります。
年度 | 調剤薬局数 (店舗数) | 備考 |
---|---|---|
2019年度 | 60,171 | 初めて6万店舗を突破 |
2020年度 | 60,000 | 約6万店舗を維持 |
2021年度 | 61,791 | 前年度比840店舗(1.4%)増加 |
2022年度 | 61,715 | 前年度比584店舗(約0.9%)減少 |
2023年度 | 61,300 | 微減傾向が続く |
地方においては、人口減少と高齢化の進行により、薬局の経営環境がより厳しくなっており、新規採用を控える薬局も増えています。
薬局数の減少は直接的に薬剤師の求人数減少につながるため、転職市場の競争激化を招いています。
デジタル技術の導入で効率化が進んでいる
薬剤師の転職を厳しくしている背景として、調剤業務におけるデジタル技術の導入で効率化が進んでいることもあげられます。
- 一包化の鑑査業務サポート
- 注射ピッキングの自動化
- 抗がん剤ミキシングロボット
- AIによる薬歴作成サポート

勤め先の薬局では、PROOFITという鑑査システムを導入しています。
一包化の鑑査システムを導入したことで、従来よりも少ない人数で業務を遂行できるようになりました。
このような自動調剤システムや電子薬歴システム、AIを活用した機械の普及により、業務効率が格段に向上しています。ただ裏を返せば、従来の薬剤師業務は機械があれば代用が利くとも言えます。
これらの技術革新は薬局経営の効率化に寄与する一方、従来と同じ業務量をより少ない薬剤師数で対応できるようになったため、新規採用のニーズが減少しています。
後ほど詳しく解説しますが、AI技術を使いこなしながら、対人業務に特化する薬剤師が求められています。
転職が厳しい薬剤師の特徴

転職が厳しい薬剤師には、業界全体の動向も関係しますが、いくつかの共通した特徴があります。
転職回数が多い
転職回数の多さは、求職者にとっての大きなマイナス要因です。特に、短期間での転職を繰り返している場合「定着性に問題がある」「計画性がない」といった印象を与えかねません。

一般的には、転職回数は3回以内が望ましいとされています。
4回以上の転職歴がある場合、転職理由を明確に説明できるよう準備しましょう。2年未満の在籍期間が職歴がある際は、詳しい経緯を聞かれると思ってください。
出産・育児が離職理由の場合、復職の意欲はもちろんですが、今後のキャリアや仕事に対する熱量を伝える必要があります。
スキルや経験が不足している
転職希望者のスキルや経験が不足していると、転職活動は厳しくなります。
先ほど解説した通り、基本的な調剤業務ができるだけでは物足りない人材として評価されてしまいます。
- 管理業務の経験がない
- 専門性の欠如
- 実績がない
- コミュニケーション能力の不足
在宅医療や抗がん剤・抗菌薬など特定領域の専門知識や経験が浅い薬剤師は、差別化が図りにくく、転職市場での評価は高くありません。

患者対応や他職種連携が重要視される現在において、コミュニケーション能力不足はマイナス評価になってしまいます。
経験年数が浅く資格がない薬剤師は、「今後○○分野の専門資格を取得したい」のように、将来への意欲をアピールする必要があります。
転職先に求める条件が厳しすぎる
転職先に求める条件が厳しすぎる薬剤師も転職活動で苦戦することになるので注意してください。
過度な給与条件を要求したり、勤務地の希望が厳しすぎたりする場合、該当する求人が極端に少なくなります。加えて、採用担当者からの評価も厳しくなることも。
復職したいママさん薬剤師は、子育て支援制度を重視しすぎて、ほかの雇用条件を見落とさないよう注意しましょう。

優先順位を明確にして譲れないポイントを整理するのが大切です。
優先順位の決め方や転職活動の進め方を詳しく解説した記事もありますので、ぜひこちらもあわせてご覧ください。
» 成功確率をグッと上げる薬剤師の転職活動について詳しく解説!
厳しい転職市場で成功する薬剤師の特徴

厳しい転職市場の中でも転職活動を成功させる薬剤師の特徴は以下の通りです。
コミュニケーション能力が高い
コミュニケーション能力が高い薬剤師は、転職活動を成功させる確率が高い傾向にあります。
コミュニケーション能力が高いとは、単に話が上手い、社交的というな表面上の話だけでなく、以下のような要素を持ちあわせた人材です。
- 共感力:
相手の立場や状況を配慮できる力 - 聞く力:
相手の話の内容から伝えたいことを正確に受け取れる能力 - 伝える力:
相手の聞く力にあわせて理解してもらえるよう言葉を使いこなす能力
疑義照会を例にすると、電話か対面かどうか・医師は診察中かなど、話し相手の状況・時間帯などにあわせて使う言葉や言い回しを変えられる薬剤師は、コミュニケーション能力が高いと言えます。

多職種との連携はもちろん、患者さんとのやり取りでもコミュニケーション能力は重要です。
優れたコミュニケーション能力を持つ薬剤師は、患者さん満足度の向上に直結します。薬局や病院の評判にもつながるため、採用担当者から高く評価されます。
管理薬剤師や専門薬剤師の経験がある
管理薬剤師や専門薬剤師の経験は、転職市場における重要な評価ポイントです。管理薬剤師や専門薬剤師の経験が評価される理由をまとめました。
管理薬剤師の価値:
- マネジメント能力の証明
- 調剤報酬・介護報酬に関する豊富な知識
- 経営者の考えが共有できる
専門薬剤師の価値:
- 一定分野に特化した知識の証明
- 高度な医療を提供する環境への適応
- ほかの医療スタッフへ教育ができる
管理薬剤師は、各店舗に1人在籍していなければなりません。薬に関する知識はもちろん、店舗管理能力やスタッフ管理能力など、マネジメント能力が無ければ管理薬剤師は務まりません。
» 管理薬剤師等の責務の内容について|厚生労働省
専門資格を持つ薬剤師は、その分野における高度な知識を持ち合わせており、高度化する現代の医療において重要な人材として評価されます。
管理薬剤師や薬剤師の専門資格について詳しく解説した記事もあります。以下の記事もあわせてご覧ください。
» 管理薬剤師とは?要件・仕事内容・年収まで詳しく解説!
»【 薬剤師の認定資格一覧】転職活動に役立つおすすめ資格はコチラ!
在宅医療に対応できる
現代社会において、在宅医療に対応できる薬剤師は評価されやすい傾向にあります。その理由は以下の通りです。
- 超高齢社会へ突入した時代背景
- 入院→在宅へシフトチェンジ
- 在宅医療に対する診療報酬の評価アップ

超高齢社会とは
65歳以上の高齢者の割合が「人口の21%」を超えた社会のこと
上の図を見ても分かるように、現在の日本は超高齢社会へ突入しました。これまでのような入院を主とした医療提供には限界があります。こうした背景から在宅医療の重要性は増しています。
もちろん、薬剤師も在宅医療に対応できる能力が必要です。病院薬剤師の業務を患者宅や介護施設でも同様に行うようなイメージになります。
従来の薬局薬剤師が持ち合わせていたスキルではなく、多職種と連携を取りながら薬学的管理が行える能力が求められます。
スキルアップを続けている
スキルアップを続けている薬剤師は、転職市場に限らず医療現場でも高く評価されます。
- 認定薬剤師や専門資格の取得
- 学会や研修会の参加・発表
- 最新の薬学知識の習得
- AI活用方法の習得
自己研さんを怠らない、学び続ける姿勢を持った薬剤師は、日々進化する医療情報や時代の変化に合わせられる柔軟性も持ち合わせています。
AI技術の浸透が遅れている医療業界においては、副業をしていることが強みになる場合も。限られた時間で業務を最大限まで効率化するにはAIの活用方法を身につけていなければなりません。
副業にAIを取り入れていると、薬剤師業務の中にAI技術が搭載された際に何の抵抗も無く使いこなせるでしょう。
» 薬剤師におすすめの副業7選を紹介!
認定薬剤師や専門資格の取得、学会や研修会の参加・発表、AI活用方法の習得など、常に最新の知識とスキルを身につける努力が大切です。
厳しい転職市場で薬剤師が成功するためのポイント

厳しい転職市場で薬剤師が成功するためのポイントは以下の通りです。
自己分析やスキルの棚卸しをする
転職活動の第一歩は、自己分析とスキルの棚卸しをすることです。これまでの職歴を時系列で整理し、各職場での具体的な業務内容、達成した成果、身につけたスキルを詳細にリストアップします。
- 業務経験:
門前薬局であれば診療科、在宅経験の有無、処方せん枚数、担当業務の内容 - 保有資格:
認定薬剤師、専門薬剤師、研修修了証など - 管理経験:
スタッフ管理、業務改善、プロジェクト管理など - 学習歴:
学会参加、論文執筆、研修受講など
単に「調剤業務を行った」ではなく「1日平均○枚の処方せんを調剤し、待ち時間○分以内を目標に投薬することで、患者満足度向上に貢献した」といった具体的な数値や成果を盛り込むことが大切です。

育休中や子育て中の方は、ブランク期間中の学習活動や、子育てを通じて得られたスキルも整理しておきましょう。
志望動機とキャリアプランを明確にする
転職活動において、志望動機とキャリアプランの明確化は重要です。なぜなら、採用担当者は応募者が長期的に会社に貢献してくれるかどうかを重視するからです。

自分の価値観やキャリア目標との合致点を見つけることが大切です。
採用担当者が納得できる志望動機を示すには、これまでと今後のキャリアがはっきりしなければなりません。これらに加え、会社の理念や事業内容、将来性について十分にリサーチする必要があります。
キャリアプランは、短期目標(1~2年)・中期目標(3~5年)・長期目標(6~10年)に分けて具体的に考えましょう。
志望動機とキャリアプランが明確なほど、採用担当者の評価も明確になり、企業とのミスマッチ防止にもつながります。
企業や業界の情報収集を徹底する
転職を成功させるには、応募先の企業や業界の情報収集を徹底することがポイントです。
- 公式ホームページや会社案内
- 求人情報サイトの企業レビュー
- 薬剤師向け雑誌
- 薬剤師専用SNS
- 関係者の口コミ情報
企業の理念や方針、財務状況・競合他社との差別化要因などは、公式ホームページで調べられます。
月間薬事や調剤と報酬といった薬剤師向け雑誌、薬剤師専用のSNSなどから調剤報酬改定の動向や再編状況など、薬剤師業界全体の変化を押さえておくのも重要です。
面接での質問に対して慌てることなく、自分の考えや意思をはっきりと伝えられるよう、リサーチは徹底的に行いましょう。
複数の転職エージェントを活用する
転職の成功率を高めるコツとして、複数の転職エージェントを活用することをおすすめします。転職エージェントを利用する際、リスクとなるのがエージェントとの相性が合わないケースです。

ひとつの転職エージェントに相談するのも良いですが、得意とする業種やエリア・雇用形態などはそれぞれ異なります。

そのため、業界大手と特化型のエージェントを組み合わせて相談するのがおすすめです。
薬剤師の転職エージェントは登録料はもちろん、利用料はいっさいかかりません。
私が実際に利用した中でおすすめしたい転職エージェントを紹介している記事もありますので、ぜひあわせてご覧ください。
実際に利用した中から厳選!
転職が厳しい薬剤師におすすめのエージェントの特徴

転職が厳しい薬剤師におすすめのエージェントの特徴を以下にまとめました。
薬剤師専門のエージェントである
転職が厳しい薬剤師におすすめのエージェントの特徴として、薬剤師専門の転職エージェントであることがあげられます。
薬剤師専門の転職エージェントは、薬剤師業界の動向に精通しており、求人情報だけでは見えない情報も持ち合わせているのが特徴です。
薬剤師専門のエージェントは、薬剤師業界での転職支援経験が豊富で、薬剤師特有の悩みや課題について的確なアドバイスをしてくれます。
厳しい薬剤師の転職市場の中でも、求職者のスキルや希望条件に沿ってマッチング度の高い求人情報を見つけ出してくれます。

難化しつつある薬剤師の転職をサポートしてくれるのが専門の転職エージェントです。
サポートが充実している
サポートが充実していることも、おすすめの転職エージェントの特徴です。特に、以下のようなサポートがあるところを利用するのがおすすめです。
- 希望条件の深いヒアリング
- 求人情報には無い情報の提供
- 履歴書・職務経歴書の作成支援
- 面接対策・模擬面接
- 条件交渉の代行
- 転職後のフォローアップ
転職エージェントはすべて無料で利用できますが、これはインセンティブを企業側からもらっているからです。


そのため、転職エージェントの中には利益を優先して求人情報を提供するところもあります。
だからこそ、表面的な求人情報だけでなく、応募先の事情や募集の背景などを教えてくれる転職エージェントを利用しましょう。
転職活動は長期間にわたるケースが一般的。だからこそ、信用できる転職エージェントを見つけ、的確なアドバイスを受けられる状態を作るのが重要です。
» 転職初心者が転職サイトを使うなといわれる理由について詳しく解説!
求人や実績が豊富にある
求人や実績が豊富にあることは、おすすめの転職エージェントとして重要なポイント。厳しい転職市場の中でも求人が多いほど選択肢は多くなり、実績が豊富なほど、転職の成功確率は高いといえるからです。
チェック項目 | 重要度 | 確認ポイント |
---|---|---|
求人数 | ★★★ | 総求人数 非公開求人数 |
求人の質 | ★★★ | 優良企業の求人保有状況 |
転職実績 | ★★☆ | 薬剤師の転職支援実績 |
成功率 | ★★☆ | 転職成功率 転職後の定着率 |

求人数だけでなく、求人の質も重要です。
優良企業や将来性ある薬局、労働条件の良い職場などの求人を多く取り扱っているエージェントを選びましょう。非公開求人の取り扱い状況も重要なポイントです。
評判や口コミが良い
転職エージェントの評判や利用者の口コミは、サービスの質を判断する重要な情報源です。
転職エージェントの評価だけでなく、SNSや薬剤師専用のコミュニティサイト内の評判も併せて確認するのをおすすめします。
特に注目すべきポイントは、担当者の対応の質、求人紹介の精度、転職後のフォローアップの有無です。複数の情報源から情報を収集することで、より客観的な評価を得ることができます。

私が利用した中でおすすめしたい転職エージェントを紹介した記事もあわせてご覧ください。
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まとめ

薬剤師の転職市場は確かに厳しい状況にありますが、適切な準備と戦略的なアプローチを取ることで、必ず道は開けます。
薬剤師数の増加、調剤薬局の統廃合、デジタル技術の導入による効率化などの要因を理解し、現実的な転職活動を行うことが重要です。
転職に苦戦する薬剤師の共通した課題を認識し、改善に取り組む一方で、成功する薬剤師の特徴を参考に自分のスキルアップを図ることが大切です。
転職市場で高く評価されるスキル
- コミュニケーション能力の向上
- 管理・専門経験の蓄積
- 在宅医療への対応
- 継続的な学習
育休中や子育て中のママ薬剤師の場合、ブランクや勤務条件の制約はありますが、子育てを通じて培われた共感力や時間管理能力は大きな強みです。
子育て支援制度が充実した職場を見つけることで、仕事と家庭の両立を実現でできる可能性が上がるでしょう。
転職活動においては、徹底した自己分析、明確な志望動機とキャリアプラン、企業・業界情報の収集、複数の転職エージェントの活用が成功の鍵となります。
薬剤師専門で充実したサポートを提供し、豊富な求人と実績を持つ評判の良いエージェントを選ぶことで、転職成功の可能性を大幅に高めることができます。

現在の厳しい市場環境を正しく理解し、エージェントとともに適切な対策を講じていきましょう◎
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