
カロナール®錠って、どうして500mgだけ「劇薬」に分類されているの?
カロナール®錠の500mgが劇薬扱いになるのは、有効成分のアセトアミノフェン含有量が300mgを超えるためです。
これは、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則(薬機法施行規則)に定められたルールです。
薬の危険性というよりも「含有量による法的分類」の結果といえます。
この記事では、
- カロナール®錠500mgが劇薬指定される法的根拠
- 「劇薬」の定義と管理方法
- 他の薬でも見られる『規格による分類の違い』の事例
これらについて、薬剤師の視点でわかりやすく解説します。
A.アセトアミノフェンの含有量が300mgを超えると劇薬指定になるから
結論から言うと、カロナール®錠500mgが劇薬に指定されているのは、1錠中に含まれるアセトアミノフェンの量が300mgを超えるためです。
これは、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)施行規則の中に明記されています。
(毒薬及び劇薬の範囲)
第二百四条七十 パラアセトアミノフエノール及びその製剤。ただし、次に掲げるものを除く。
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則より一部抜粋
(1) 一個中パラアセトアミノフエノール〇・三g以下を含有するもの
(2) パラアセトアミノフエノール二%以下を含有するシロツプ剤又はエリキシル剤であつて一容器中パラアセトアミノフエノール〇・六g以下を含有するもの
(3) パラアセトアミノフエノール〇・〇二%以下を含有する体外診断薬
つまり、カロナール®錠200mg・300mgは普通薬に分類されますが、500mgのみ劇薬扱いになります。
坐薬や細粒など、各剤形ごとの区分について、以下の表にまとめました。
| 製品名 | 規格(赤字=劇薬) | |||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| カロナール®錠 | 200mg | 300mg | 500mg | – | – | – |
| カロナール®細粒 | 20%0.5g分包 | 20%1.0g分包 | 20%バラ | 50%0.6g分包 | 50%1.0g分包 | 50%バラ |
| カロナール®原末 | バラ包装 | – | – | – | – | – |
| カロナール®シロップ2% | バラ包装 | – | – | – | – | – |
| カロナール®坐剤 | 小児用50 | 100 | 200 | 400 | – | – |
カロナール®細粒のように、分包品かバラ包装かによって区分が異なる商品もあります。これはカロナール®に限らずアセトアミノフェン全般に関するルールです。
カロナール®の基本情報
有効成分:アセトアミノフェン
カロナール®の有効成分はアセトアミノフェン(化学名:N-acetyl-p-aminophenol)です。国際的には「パラセタモール(paracetamol)」とも呼ばれ、100年以上の歴史を持つ解熱鎮痛薬として世界中で広く使用されています。
NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)と異なり、抗炎症作用はほとんどありませんが、胃腸障害や腎障害のリスクが低いという特徴があります。
作用機序
アセトアミノフェンの作用機序は、現在も完全には解明されていませんが、主に以下のメカニズムが考えられています。
- 中枢神経系でのCOX阻害:脳内でシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害し、プロスタグランジンの産生を抑制することで解熱・鎮痛作用を発揮します。ただし、末梢でのCOX阻害作用は弱いため、抗炎症作用はほとんどありません。
- 体温調節中枢への作用:視床下部の体温調節中枢に作用し、末梢血管を拡張させることで体外への放熱を促進し、解熱効果を発揮します。
- 下行性抑制系の賦活化:カンナビノイド受容体やセロトニンを介した下行性抑制系を活性化することで、鎮痛効果をもたらすと推定されています。
NSAIDsとは異なり、COX-1を阻害しないため、胃粘膜保護作用を有するプロスタグランジンE2の産生を抑制せず、消化管障害のリスクが低いとされています。
効能・効果
カロナール®錠の効能・効果は以下のとおりです。
- 頭痛、耳痛、症候性神経痛、腰痛症、筋肉痛、打撲痛、捻挫痛、月経痛、分娩後痛、がんによる疼痛、歯痛、歯科治療後の疼痛、変形性関節症の鎮痛
- 急性上気道炎(急性気管支炎を伴う急性上気道炎を含む)の解熱・鎮痛
- 小児科領域における解熱・鎮痛
成人の鎮痛目的では1回300〜1000mg、1日総量として4000mgを限度とされています。ただし、重篤な肝障害を防ぐため、1日総量1500mgを超える高用量で長期投与する場合には定期的な肝機能検査が推奨されています。
劇薬・毒薬とは
劇薬・毒薬の定義
劇薬とは、劇性が強いものとして厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定する医薬品です(薬機法第44条第2項)。一般的に、通常用量の10倍の量を摂取しただけで健康被害が発生し、毒性を発揮する医薬品を指します。
劇薬の指定における基本的な判断基準は以下のとおりです。
- 急性毒性(概略の致死量):経口投与で300mg/kg以下、皮下投与で200mg/kg以下、静脈内投与で100mg/kg以下
- 安全域の狭さ:致死量と有効量の比(治療係数)や毒性勾配から、安全域が狭いと認められるもの
- 慢性毒性:動物実験において薬用量の10倍以下の長期連続投与で機能または組織に障害を認めるもの
一方、毒薬は劇薬よりもさらに毒性が強く、おおよそ10倍の差があります。毒薬の基準は経口投与で30mg/kg以下、皮下投与で20mg/kg以下、静脈内投与で10mg/kg以下とされています。
表示義務と管理方法
薬機法では、毒薬・劇薬の容器やパッケージへの表示について厳格に規定されています。
- 毒薬:黒地に白枠、白文字でその品名および「毒」と表示
- 劇薬:白地に赤枠、赤字でその品名および「劇」と表示
保管管理についても以下のルールが定められています。
- 毒薬:他の物と区別して貯蔵・陳列し、その場所には鍵を施すこと(施錠義務あり)
- 劇薬:他の物と区別して貯蔵・陳列すること(施錠義務なし、ただし識別は必要)
カロナール®500mgを含む劇薬の場合、毒薬のような施錠は義務付けられていませんが、保管場所に赤い枠をつけるなど視覚的に識別できるようにする必要があります。
劇薬・普通薬・毒薬の違い
| 区分 | 急性毒性(経口) | 表示 | 保管 |
|---|---|---|---|
| 毒薬 | 30mg/kg以下 | 黒地・白字「毒」 | 施錠必須 |
| 劇薬 | 300mg/kg以下 | 白地・赤字「劇」 | 区別して保管 |
| 普通薬 | 上記に該当しない | 特になし | 特になし |
なお、毒薬・劇薬は14歳未満の者、その他安全な取扱いをすることについて不安があると認められる者への販売・交付が禁止されています。ただし、調剤された医薬品についてはこの制限は適用されません。
規格・容量によって劇薬扱いになる医薬品
有効成分が同じでも、容量や剤形、包装によって劇薬か普通薬かに分類が分かれる医薬品は、カロナール以外にも存在します。これも薬機法施行規則の除外規定に基づくものです。
テオドール®(テオフィリン)
テオフィリン製剤であるテオドール®は、気管支喘息やCOPDの治療に使用される気管支拡張薬です。
- 劇薬:錠200mg
- 普通薬:錠50mg、錠100mg
テオフィリンは治療域が狭く、血中濃度のモニタリングが必要な薬剤です。高用量規格は過量投与時のリスクが高まるため、劇薬に指定されています。
ドグマチール®(スルピリド)
スルピリド製剤であるドグマチール®は、統合失調症やうつ病、胃・十二指腸潰瘍の治療に使用されます。
- 劇薬:錠100mg、錠200mg
- 普通薬:カプセル50mg、錠50mg
コントミン®・レボトミン®(クロルプロマジン塩酸塩)
フェノチアジン系抗精神病薬であるクロルプロマジン塩酸塩製剤も、規格によって分類が異なります。
- 劇薬:糖衣錠50mg、糖衣錠100mg
- 普通薬:糖衣錠12.5mg、糖衣錠25mg
以下の表に、規格によって劇薬・普通薬の分類が変わる代表的な医薬品をまとめました。
| 医薬品名(成分名) | 劇薬に分類される規格 | 普通薬に分類される規格 | 劇薬分類の主な理由 |
|---|---|---|---|
| テオドール(テオフィリン製剤) | 錠200mg | 錠50mg、錠100mg | 除外規定で定められた量を超過するため |
| ドグマチール(スルピリド製剤) | 錠100mg、錠200mg | カプセル50mg、錠50mg | 同上 |
| コントミン/レボトミン(クロルプロマジン塩酸塩製剤) | 糖衣錠50mg、糖衣錠100mg | 糖衣錠12.5mg、糖衣錠25mg | 同上 |
これらの例からも、医薬品の「劇薬」指定は、その成分が持つ毒性に加えて、「一単位あたりの含有量が、誤って過量に服用した際のリスクを高めるか否か」という観点から、法的に厳格に定められていることがわかります。
まとめ
- カロナール®500mgが劇薬である根本的な理由は、薬機法施行規則で定められた劇薬除外規定(300mg以下)をその規格(500mg)が超えているためです。
- 劇薬とは、通常用量の約10倍量で毒性を発揮する安全域の狭い医薬品を指し、その取り扱いは法律で厳しく定められています。
- アセトアミノフェン製剤以外の薬でも、規格や包装によって劇薬・普通薬の分類が変わる例が存在します。これは、成分の毒性だけでなく、「一単位当たりの量」が安全域に与える影響を考慮しているためです。
薬局での管理においては、カロナール®500mgは劇薬として他の医薬品と区別して保管し、視覚的に識別できるようにすることが重要です。患者さんへの交付時にも、劇薬である旨を認識した上で適切な服薬指導を心がけましょう。
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