
2025年4月25日、厚生労働省は薬事審議会を開催し、いくつかの医薬品の添付文書改訂が了承されました。
今回は、その中でも注目を集めているドンペリドンの添付文書改訂について詳しくご紹介します。
ドンペリドンの妊婦禁忌が削除に
吐き気止めとして広く使用されているドンペリドン(ナウゼリンⓇ他)について、添付文書の禁忌から「妊娠又は妊娠している可能性のある女性」の項目が削除になりました。
背景と経緯
ドンペリドン開発時のラット実験において、臨床用量の約65倍の高用量(200mg/kg/日)で催奇形性が認められていました。このデータを理由に、ドンペリドンは「妊娠又は妊娠している可能性のある女性」への使用が禁忌とされていました。
現場では、妊娠悪阻の症状がドンペリドンの適応である消化器症状に類似しているため、妊娠に気づいていない女性にドンペリドンが処方されるケースが少なくありません。
後に妊娠が判明し、ドンペリドンが禁忌薬と知り、その不安から人工妊娠中絶を選択する可能性があるのではという問題も指摘されていました。

妊娠と薬情報センターが妊婦禁忌の相談を受けた中で、最多だったはドンペリドンだったそうです。
» ドンペリドンの「使用上の注意」の改訂について|厚生労働省
このような背景もあって、日本産科婦人科学会と日本神経学会がドンペリドンの妊婦禁忌の解除を求める要望書が提出されていました。
ワーキンググループによる調査結果報告
国立成育医療研究センターがワーキンググループを設置し、報告書の内容を取りまとめ、PMDAが臨床使用に関する情報や海外の添付文書などを再度調査。下記のような調査結果報告書が提示されました。
- 臨床用量の約23倍(70mg/kg/日)では催奇形性が認められなかった
- 「産婦人科診療ガイドライン産科編2023」では「妊娠初期のみ使用された場合、臨床的に有意な胎児への影響はないと判断してよい医薬品」として記載
- 海外の添付文書では妊婦への使用が禁忌とされていない
まとめ:ドンペリドンの改訂内容
今回開催された薬事審議会の結果、ドンペリドンの添付文書改訂が了承され、以下のように変更されました。
- 禁忌項:
「妊婦又は妊娠している可能性のある女性」の削除 - 妊婦項:
「妊娠又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」の記載
今回の添付文書改訂改定は、最新の科学的知見に基づいた適正使用を促進するための重要な変更です。
ドンペリドンの妊婦禁忌解除は、不必要な不安や中絶を防ぐ可能性がある一方で、漫然とした安易な使用を促すものではありません。
医療関係者は、今回の添付文書改訂について十分理解し、患者さんに適切な情報提供を行うことが求められています。
今回の添付文書改訂の情報を知らず、古い情報をみて不安を感じる妊婦さんは少なからずいらっしゃると思います。

そんな時、適切な声がけができるような薬剤師でありたいですね。
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