
- 初任給の明細を見たら、手取りが思ったより少なくて驚いた
- 他の薬剤師がどれくらいの手取りをもらっているか気になる
- もっと手取りを増やすための具体的な方法が知りたい
薬剤師として働き始めたものの、給与明細を見て額面と手取りの差に戸惑う方は多いのではないでしょうか。将来の明確なライフプランを立てるためには、薬剤師の手取り額を正しく理解することが欠かせません。
この記事では薬剤師の初任給の手取りと額面の違いや勤務先別の相場、手取りを増やす具体的な方法を解説します。記事を読めば自分の現状を客観的に把握し、収入アップに向けた具体的なプランを立てられます。
薬剤師の初任給の手取りを決める要素は勤務先や働き方などです。所得控除やスキルアップ、転職などの方法によって収入アップを目指しましょう。
薬剤師の手取りとは実際に受け取れる金額のこと

薬剤師の給与における「手取り」とは、求人票に記載されている額面給与から税金や社会保険料を差し引いた後、実際に口座に振り込まれる金額のことです。手取りに関する基礎知識として、以下の点を解説します。
- 額面と手取りの違い
- 給与から引かれる税金の種類
- 入社2年目に手取りが減る理由
額面と手取りの違い
額面は会社から支払われる給与の総額、手取りは実際に受け取れる金額を指します。額面には基本給に加え、通勤手当や資格手当などの各種手当ても含まれます。最終的に銀行口座に振り込まれる「手取り」は、額面から税金や社会保険料を引いた金額です。
手取り額は額面の75~85%となることが一般的です。転職活動などで求人情報を見る際は、記載されている給与が手取りではなく額面である点に注意しましょう。
給与から引かれる税金の種類

給与から天引きされる税金は「所得税」と「住民税」の2種類です。所得税や住民税は国や住んでいる自治体の運営費として納める税金です。所得税は当年に得た収入に応じて国に納める税金で、給料が多いほど税率が高くなります。住民税は前年の収入をもとに計算され、当年の1月1日に住んでいた都道府県や市区町村に納めます。
入社2年目に手取りが減る理由
入社2年目になると、住民税の課税や社会保険料の増加によって手取りが減る場合があります。住民税は前年の所得に対してかかる税金のため、前年に所得がない、もしくは少ないと入社1年目には課税されません。入社2年目の6月から社会人1年目の所得に応じた住民税が引かれ始めるので、手取りが減ります。
社会保険料は毎年4~6月の給与額をもとに見直され、新しい金額は当年の9月から適用されます。入社1年目で昇給があると2年目の9月から社会保険料が上がることも、手取りが減る原因です。
【勤務先別】薬剤師の初任給の手取り額

薬剤師の初任給の手取り額は勤務先によって大きく変わります。以下の5つの勤務先に分けて、薬剤師の初任給の手取り額について解説します。
- 調剤薬局
- ドラッグストア
- 病院
- 製薬会社
- 公務員薬剤師
調剤薬局
薬剤師の勤務先として最も一般的な調剤薬局の初任給は額面で25~30万円、手取り額は20~24万円程度が相場です。人手不足が顕著な地方では薬剤師の初任給が額面で30万円を超える場合もあります。過疎地域では住宅手当や赴任手当などが手厚く支給され、都市部の薬剤師との実質的な収入差がさらに広がるケースもあります。
調剤薬局を経営する企業の規模も薬剤師の初任給を左右する要素の一つです。大手チェーン薬局は雇用の安定性があり福利厚生が充実している一方で、薬剤師の給与は平均的に設定される傾向があります。
中小規模の調剤薬局では経営者との距離が近いため給与交渉がしやすく、成果報酬制度が柔軟に設計されている場合も多くあります。薬剤師の実力や勤務条件によっては、中小規模の調剤薬局でより高い収入を得ることも可能です。
ドラッグストア

ドラッグストアで働く薬剤師の初任給は、他の勤務先に比べて高い傾向にあります。薬剤師の初任給の額面は30~35万円、手取りは23~28万円程度です。
ドラッグストアの給与水準が高い理由は、薬剤師の担当する業務が調剤業務だけに留まらないからです。ドラッグストアで働く薬剤師は市販薬の販売や商品の品出し、レジ対応といった店舗運営に関わる幅広い仕事を担当します。
土日祝や夜間の勤務がある店舗が多く、手当が給与に上乗せされることもドラッグストアの給与水準が高い要因です。薬剤師が将来の店長候補として採用される場合は、さらに高い給与が期待できます。
企業によっては初任給が高くても、入社後の昇給率は緩やかなケースもあるため注意が必要です。ドラッグストアを運営する会社の規模や、店舗が都市部と地方のどちらにあるかによっても薬剤師の給与に差が出ます。
病院
病院薬剤師の初任給の手取り額は額面で22〜25万円、手取り額は17〜20万円程度です。ドラッグストアや調剤薬局と比べると給与は低めですが、雇用の安定性や福利厚生の充実度などが病院で働くメリットです。国公立病院は公務員の給与規定に準じているため、勤続年数に応じた安定した昇給が期待できます。
夜勤や当直業務を担当すれば手当による収入アップも可能です。多様な経験を積みながら専門性を高められることも、病院薬剤師の魅力と言えます。
製薬会社

製薬会社の初任給は薬剤師が活躍する職場の中で最も高水準です。製薬会社では研究開発職などの修士卒以上が求められる職種が多く、学歴に応じて給与が高く設定される傾向があります。修士卒の薬剤師の初任給は額面で27万円、手取りで20〜23万円程度です。
製薬会社のMR(医薬情報担当者)のような営業職は、営業手当や日当が付くので手取りが高くなる傾向があります。家賃補助や借り上げ社宅制度が充実している会社が多く、住居費の負担が減って使えるお金が多くなる点も製薬会社勤務の特徴です。製薬会社はボーナスも高水準なので、年収で見ると他の薬剤師の勤務先と大きな差がつきやすくなります。
公務員薬剤師
公務員薬剤師の初任給は額面で20~22万円、手取り額は16~19万円程度です。民間の職場に比べて低い一方で、安定性に優れていることが公務員薬剤師の給与の特徴です。
公務員の給与は国や地方自治体の法律で決められた「俸給表」という給与の基準表にもとづいて支払われます。景気の波に左右されにくく、毎年着実に給料が上がっていく仕組みです。
公務員薬剤師はボーナスや退職金制度が整っており、家賃補助などの福利厚生も手厚いメリットがあります。長期的な視点で安定したキャリアを築きたい方にとって、公務員薬剤師はおすすめの働き方です。
薬剤師が初任給の手取りを増やすための対策5選

薬剤師が初任給の手取りを増やすための以下の対策を解説します。
- 所得控除を活用する
- ふるさと納税をする
- 資格を取得してスキルアップする
- 副業で収入を増やす
- 転職を視野に入れる
所得控除を活用する
薬剤師が初任給の手取り額を増やすには所得控除を最大限に活用することが有効です。所得控除とは税金を計算する前の「所得」から一定の金額を差し引いて課税対象を小さくすることで、所得税や住民税が安くなる仕組みです。毎月の給与から天引きされる税金が減ると、手取りが増えます。
所得控除の例には以下が挙げられます。
- 基礎控除
- 社会保険料控除
- 生命保険料控除
- 扶養控除
- 医療費控除
- 小規模企業共済等掛金控除(iDeCoなど)
自分が利用できる控除を知り、年末調整や確定申告で忘れずに申請すれば、賢く手取りを増やせます。
ふるさと納税をする

ふるさと納税とは応援したい自治体に寄附を行うことで、所得税や住民税の一部が控除される制度です。寄附額のうち、自己負担額が2,000円を超える分が税金から控除されます。控除上限の範囲内で寄附すれば、実質2,000円の負担だけで寄附先から返礼品がもらえるという仕組みです。
返礼品にはお米や肉などの食料品や、トイレットペーパーやおむつなどの日用品が選べます。確定申告が不要な「ワンストップ特例制度」を利用すれば、ネットショッピングのような感覚で手軽にふるさと納税を利用できます。
資格を取得してスキルアップする
薬剤師としての専門性を高める資格を取得すると、初任給の手取りアップにつながります。資格があると手当が支給されたり、昇給・昇進で評価されたりして収入アップしやすくなります。転職時に自分のスキルを客観的に証明することで、給与交渉を有利に進めることも可能です。
薬剤師のスキルアップには以下の資格の取得がおすすめです。
- 研修認定薬剤師
- 専門薬剤師
- 在宅療養支援認定薬剤師
- 漢方薬・生薬認定薬剤師
- スポーツファーマシスト
研修認定薬剤師や専門薬剤師は「かかりつけ薬剤師(※)」の要件を満たすため、多くの職場で手当が支給されています。在宅医療や漢方といった特定の分野に特化した資格も、高い専門性により手当の対象となるケースが多くあります。
» 薬剤師のキャリアアップにおすすめの資格と特徴を徹底解説!
※ かかりつけ薬剤師とは、厚生労働省が定める地域包括ケア(地域医療連携)を行うチーム医療の一員です。医薬分業が進む中で、薬剤師が「地域に根ざした継続的な医療提供者」としての役割を明確にするための制度です。
副業で収入を増やす

副業を始めることは薬剤師が本業の給与に加えて収入を増やすために有効な方法です。薬剤師の専門知識や資格を生かせる副業が多いため、自分の生活スタイルに合わせて効率良く収入を増やせます。薬剤師におすすめの副業は、以下のとおりです。
- メディカルライター
- 医薬品や健康に関する記事を書く仕事で、在宅で高単価を狙えます。
- 記事監修
- Webサイトの記事内容を医学的・薬学的な視点からチェックする仕事で、隙間時間でも取り組めます。
- 単発・スポット派遣
- 休日や空き時間に薬局で働く方法で、高時給を狙えます。
薬剤師が副業を始める際は、まず勤務先の就業規則で副業が許可されているかを確認しましょう。副業での年間所得が20万円を超えると確定申告が必要になる点も覚えておく必要があります。薬剤師の本業に支障が出ないよう、無理のない範囲で始められる副業を選ぶことが大切です。
» 薬剤師におすすめの副業、メリットとデメリットを解説!
転職を視野に入れる
薬剤師の手取りを効率的に増やすために、今よりも条件の良い職場へ転職することも有効な手段です。現在の職場で昇給を待つよりも給与水準が高い職場へ移る方が、早く手取り額を増やせる場合があります。以下の職場や働き方を選ぶと、収入アップが期待できます。
- 給与水準が高い業態へ転職する
- 各種手当が充実している企業を選ぶ
- 正当な人事評価制度が整った職場を探す
- 役職に就いて役職手当をもらう
薬剤師としての経験やスキルを正当に評価してくれる職場を選ぶことが、手取りを増やす近道です。
薬剤師が転職を考える際のポイント

薬剤師が転職を考える際のポイントは以下の4点です。
- 手取り以外の条件も確認する
- 希望する勤務条件の優先順位を決める
- 給与以外の手当や福利厚生を確認する
- 転職エージェントを活用する
手取り以外の条件も確認する
薬剤師が転職を考える際は手取りの金額だけでなく、働きやすさや将来性に関わる条件も確認することがおすすめです。給与が高くてもプライベートの時間が確保できない職場やキャリアアップが見込めない職場は、長期的には満足度が低い選択となります。求人情報を見る際は以下の点をチェックしましょう。
- 休日や休暇
- 残業時間
- 子育てサポート
- キャリアプラン
- 職場環境や人間関係
- 業務内容
- 通勤のしやすさ
事前の情報収集を丁寧に行うことで入社後のミスマッチを防ぎ、自分に合った働きやすい職場を見つけやすくなります。
希望する勤務条件の優先順位を決める

薬剤師が転職を成功させるためには、希望する勤務条件に優先順位をつけることが重要です。自分にとって「絶対に譲れない」条件をはっきりさせておくと、数多くある求人の中から自分に合う職場を選びやすくなります。以下の項目から自分にとって一番大切なものを考えてみましょう。
- 給与や年収
- 勤務時間
- 残業の有無
- 休日
- 勤務地や通勤時間
- 業務内容
- 研修制度
- スキルアップの可能性
- 職場環境
- 子育てへの理解
優先順位を整理しておけば迷うことなく転職活動を進められ、入社後のミスマッチも防げます。
» 薬剤師の年収を地域別、年齢別、男女別、職場別に解説!
給与以外の手当や福利厚生を確認する
手当や福利厚生の内容も薬剤師が転職先を考えるうえで重要な要素です。手当や福利厚生が充実していると、生活費の負担が軽くなり、将来への安心感も増します。求人情報を見る際は以下の点をチェックすることがおすすめです。
- 住宅手当・家賃補助
- 退職金制度
- 休日・休暇
- 産休・育休制度
- 時短勤務
- 資格取得支援
- 学会・研修への参加補助
- 家族・扶養手当
- 保育サポート
手当や福利厚生の実態は求人票だけではわからないことも多いため、面接の機会に質問をして自分に合った環境かを見極めましょう。
転職エージェントを活用する
薬剤師専門の転職エージェントを活用すると、忙しい毎日の中でも効率的に転職活動を進める助けになります。転職エージェントに登録すると、以下のサービスを無料で利用できます。
- キャリア相談
- 非公開求人の紹介
- 選考サポート
- 条件交渉の代行
- 企業の内部情報の提供
- 日程調整の代行
専門家による手厚いサポートを活用することで、子育て中でブランクがある方や、初めての転職で不安な方も安心して新しい職場を探せます。
» 薬剤師が転職を考えたら誰に相談する?おすすめの相談先3選
薬剤師の初任給の手取りを理解してキャリア設計に役立てよう

薬剤師のキャリアを成功させるためには、初任給の手取り額を正しく理解し、将来の計画に生かすことが大切です。手取りとは会社から支払われる給与の総額から税金や社会保険料を引き、実際に受け取れる額のことです。手取り額は勤務先や地域により大きく異なるため、自分の状況を把握したうえで収入アップのための具体的なプランを考えましょう。
薬剤師が手取りをアップさせるための方法には所得控除の活用や資格取得によるスキルアップ、転職などが挙げられます。転職先を決める際は給与だけでなく、働きやすさや手当、福利厚生などを考える必要もあります。初任給を基点として長期的な視点でキャリアプランを設計し、薬剤師として満足度の高い働き方を見つけましょう。
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