

新人薬剤師さん、若手薬剤師の皆さん、日々の業務お疲れ様です。
薬局の仕事の中でも、特に服薬指導に苦手意識を持っている方はいませんか?
「何を話せばいいのかわからない」
「患者さんにうまく伝わらない」
「時間がかかりすぎる」
など、悩みは尽きないかもしれません。でも、安心してください。服薬指導は経験を積むごとに必ず上達します。
この記事では、皆さんが抱えるそんな悩みを解決し、患者さんとの信頼関係を深める服薬指導の極意を、明日から実践できる具体的な方法とともにお伝えします。

薬剤師ポン
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薬局薬剤師12年目。
薬学部卒業後、大手チェーン薬局に就職。大病院の門前薬局の前で働き、あらゆる科の調剤を担当する。
一通りの仕事がわかってきてから、「自分の地元だったらもっといい仕事ができる」と考え、自分の地元で働きたいと強く願うようになり、地元の調剤薬局に転職。
現在は地域密着薬剤師として地元の中小薬局で勤務中。
薬剤師、薬学生応援ブログ・ポンマガジンを運営
1. なぜ服薬指導は難しいのか?新人・若手薬剤師が抱える共通の悩み

服薬指導が難しいと感じる理由はいくつかあります。まず、皆さんがどんな悩みを抱えているのか、具体的に見ていきましょう。
1-1. コミュニケーションへの不安
- 何を話せばいいか分からない: 患者さんの情報が限られている中で、どの情報を引き出し、何を伝えるべきか迷う。
- 専門用語の壁: 薬の名前や作用機序など、専門的な内容をどう平易な言葉で説明すればいいか分からない。
- 患者さんの反応への不安: 質問されるのが怖い、怒らせてしまうのではないかと不安に感じる。
- 沈黙が怖い: 会話が途切れてしまうと、どう繋げればいいか分からない。
1-2. 知識・情報への不安
- 薬の知識不足: 膨大な薬の知識を全て覚えきれていないと感じる。
- 疾患知識の不足: 患者さんの疾患について十分に理解できていないと感じる。
- 最新情報のキャッチアップ: 常に更新される情報をどこまで把握すればいいか分からない。
- 情報収集の効率化: 短時間で必要な情報を引き出す方法が分からない。
1-3. 時間・効率へのプレッシャー
- 指導時間の確保: 混雑時に十分な時間を確保できない。
- スムーズな対応: もたついていると、他の患者さんを待たせてしまうというプレッシャー。
- QOL(Quality of Life)の低下: 業務時間外に勉強する時間が多く、プライベートの時間が削られる。
1-4. 患者さんとの関係性構築の難しさ
- 信頼関係の構築: 短時間で患者さんと信頼関係を築くのが難しい。
- アドヒアランス向上への貢献: 服薬指導が患者さんの服薬継続に繋がっているのか実感が湧かない。
これらの悩みは、決して皆さんだけが抱えているものではありません。誰もが通る道です。しかし、これらの悩みを乗り越えることで、薬剤師としてのスキルはもちろん、人としても大きく成長できます。
2. 服薬指導の目的を再確認する:なぜ私たちは服薬指導をするのか?

服薬指導の具体的なテクニックを学ぶ前に、まずはその根本的な目的を再確認しましょう。表面的な指導ではなく、その目的を深く理解することで、服薬指導の質は格段に向上します。
2-1. 患者さんの理解を深め、不安を解消する
最も重要な目的は、患者さんが自分自身の病気と薬について正しく理解し、安心して治療に取り組めるようにすることです。
- 正しい知識の提供: 薬の効果、副作用、飲み方・使い方などを正確に伝える。
- 不安の傾聴と解消: 患者さんが抱える病気や薬への不安、疑問を丁寧に聞き出し、寄り添いながら解消する。
- QOLの維持・向上: 薬を正しく使うことで、患者さんの生活の質が向上するようサポートする。
2-2. アドヒアランス(服薬遵守)を向上させる
患者さんが処方された薬を指示通りに服用し続けることをアドヒアランスといいます。服薬指導は、このアドヒアランスを向上させるために不可欠です。
- 飲み忘れ・飲み間違いの防止: 具体的な服用方法や注意点を分かりやすく説明し、間違いを防ぐ。
- 自己中断の防止: 副作用への不安や効果の実感がないなどの理由で、患者さんが自己判断で服薬を中断してしまうのを防ぐ。
- 治療効果の最大化: 正しく薬を服用することで、治療効果を最大限に引き出す。
2-3. 副作用の早期発見と対応
薬には必ず副作用のリスクがあります。服薬指導では、副作用の初期症状を患者さんに伝え、異常を感じた際に速やかに医療機関に連絡してもらう体制を整えることが重要です。
- 起こりうる副作用の伝達: 特に注意すべき副作用や、その症状を具体的に説明する。
- 受診勧奨のタイミング: どのような症状が出たら、いつ医療機関に連絡すべきかを明確に伝える。
- 患者さんの自己判断の抑制: 副作用が出た際に自己判断で服薬を中止しないよう指導する。
2-4. 患者さんの生活背景に合わせた個別指導
患者さんの生活習慣、家族構成、仕事内容、経済状況などは様々です。画一的な指導ではなく、患者さん一人ひとりの背景に合わせた個別指導が求められます。
- ライフスタイルへの配慮: 食事の時間、仕事の有無、介護の状況などを考慮した服薬方法の提案。
- 経済的負担への配慮: ジェネリック医薬品の提案など、経済的負担を軽減する情報提供。
- 家族の協力: 必要に応じて、同伴している家族にも情報共有と協力を依頼する。
これらの目的を常に意識することで、皆さんの服薬指導は単なる情報伝達の場ではなく、患者さんの健康を支える重要なコミュニケーションの場へと変わっていきます。
3. 明日から実践!服薬指導を劇的に変える具体的なテクニック

それでは、具体的な服薬指導のテクニックについて見ていきましょう。ここでは、すぐに実践できる具体的な方法に焦点を当てて解説します。
3-1. コミュニケーションスキル向上術
服薬指導は、一方的な情報提供ではありません。患者さんとの対話を通じて、必要な情報を引き出し、的確に伝えることが重要です。
3-1-1. オープンクエスチョンとクローズドクエスチョンの使い分け
- オープンクエスチョン(開かれた質問): 患者さんが自由に答えられる質問。「何か困っていることはありますか?」「このお薬について、何か心配なことはありますか?」など。患者さんの状況や考えを引き出すのに有効です。
- クローズドクエスチョン(閉じられた質問): 「はい」か「いいえ」で答えられる質問。「この薬は食後に飲んでいますか?」「飲み忘れたことはありませんか?」など。特定の事実確認や、患者さんが話すのが苦手な場合に有効です。
- 使い分けのポイント: まずはオープンクエスチョンで患者さんの話を傾聴し、さらに深掘りしたい部分や確認したい部分でクローズドクエスチョンを使うと良いでしょう。
3-1-2. アクティブリスニング(積極的傾聴)の実践
患者さんの話をただ聞くだけでなく、積極的に理解しようと努める姿勢が重要です。
- 相づちを打つ: 「はい」「ええ」「なるほど」など、適度な相づちで聞いていることを示す。
- うなずく: 目を見てうなずき、共感の姿勢を示す。
- 繰り返し: 患者さんの言葉を要約して繰り返す。「〜ということですね?」と確認することで、理解を深め、患者さんも「この薬剤師は自分の話をしっかり聞いてくれている」と感じます。
- 共感の言葉: 「それは不安ですね」「大変でしたね」など、患者さんの感情に寄り添う言葉をかける。
3-1-3. ペーシングとミラーリングで信頼関係を構築
- ペーシング: 患者さんの話すスピードや声のトーン、呼吸のペースなどに合わせることで、心理的な距離を縮める方法です。意識的に合わせることで、患者さんは無意識のうちに安心感を覚えます。
- ミラーリング: 患者さんの姿勢やジェスチャーをさりげなく真似る方法です。これも同様に、無意識レベルで親近感を持ってもらいやすくなります。ただし、不自然にならないように注意が必要です。
3-1-4. 沈黙を恐れない
沈黙は必ずしも悪いものではありません。患者さんが考え事をしていたり、次に何を話そうか迷っている時間かもしれません。無理に会話を埋めようとせず、患者さんに考える時間を与えることも大切です。ただし、長すぎる沈黙は避けるようにしましょう。
3-2. 薬の知識を「伝える」技術
膨大な薬の知識を、患者さんに分かりやすく伝えるための工夫です。
3-2-1. 3つの「ここだけは!」を絞り込む
患者さんに伝える情報は、多すぎると混乱させてしまいます。特に伝えたいポイントを3つ程度に絞り込みましょう。
- この薬は何の薬で、どういう効果があるのか?(例: 痛み止め、血圧を下げる薬など)
- どうやって飲むのか?(タイミング、量など)(例: 毎食後1錠、寝る前など)
- どんな副作用に注意すればいいのか?(特に頻度が高く、注意が必要なもの)(例: 眠気、胃の不快感、発疹など)
これらを軸に、患者さんの状況に合わせて必要な情報を追加していくと良いでしょう。
3-2-2. 専門用語を避け、平易な言葉で説明する
「Tmax」「Cmax」「半減期」「拮抗作用」など、専門用語は絶対に使わないようにしましょう。
- 具体的な例えを用いる: 「この薬は、体の中の悪い炎症を抑えるパトカーのようなものです」「血管を広げて、血液がスムーズに流れるようにするイメージです」など、身近なものに例えると分かりやすくなります。
- 視覚的なツールを活用する: お薬手帳や指導箋に線を引いたり、イラストや図を使って説明したりするのも効果的です。薬局によっては、写真付きの分かりやすい説明ツールを用意しているところもあります。
3-2-3. 患者さんの理解度を確認する「ティーチバック法」
一方的に説明するだけでなく、患者さんがどれだけ理解しているかを確認する方法がティーチバック法です。
- 「今お話ししたことで、何か分かりにくい点はありましたか?」と尋ねる。
- 「念のため確認ですが、このお薬はいつ飲んでいただくんでしたか?」と質問する。
- 「この薬で特に注意していただきたい症状はどんなものでしたか?」と問いかける。
患者さんが自分の言葉で説明できれば、理解度は高いと判断できます。もし不明な点があれば、再度丁寧に説明し直しましょう。
3-3. 効率的な情報収集と対応術
限られた時間の中で、効率的に情報を収集し、的確に対応するための方法です。
3-3-1. 事前準備の徹底
- 処方箋の事前チェック: 処方されている薬の効能効果、副作用、飲み合わせ、注意事項などを事前に確認しておく。特に初めて扱う薬や、注意が必要な患者さん(高齢者、小児、妊婦・授乳婦など)の薬は入念にチェック。
- 患者情報の確認: 過去の薬歴、アレルギー歴、副作用歴、併用薬などを確認し、今回の処方との整合性をチェックする。可能であれば、患者さんの既往歴や生活背景に関する情報も確認する。
- 疑義照会の準備: 不明な点や疑義がある場合は、事前に医師に確認すべき点を整理しておく。
3-3-2. 問診のポイントを絞る
全ての情報を根掘り葉掘り聞く必要はありません。今回の処方内容や患者さんの状況に合わせて、本当に必要な情報に絞って問診を行うことが、効率化に繋がります。
- 問診項目をルーティン化: 「副作用は出ていませんか?」「飲み忘れたことはありませんか?」「何か他に気になることはありませんか?」など、基本的な問診項目をルーティン化することで、聞き漏らしを防ぎ、スムーズに進めることができます。
- 「SOAP」形式で情報整理:
- S (Subjective): 患者さんの主観的な訴え(「頭が痛い」「眠れない」など)
- O (Objective): 客観的な情報(血圧、検査値、薬歴、年齢、性別など)
- A (Assessment): SとOから薬剤師が判断したこと(例: 「この症状は副作用の可能性がある」「飲み忘れが原因で効果が出ていない」など)
- P (Plan): 今後の対応(例: 「医師に確認する」「服薬方法を再指導する」など)
この形式で情報を整理することで、思考が整理され、次のアクションが明確になります。
3-3-3. 指導箋の活用と記載の工夫
- 必要事項のみを記載: 指導箋には、患者さんが後で見返して分かるよう、必要最低限の情報を簡潔に記載しましょう。飲み方、特に注意すべき副作用、次回の受診目安などが良いでしょう。
- マーカーや下線: 特に重要なポイントには、マーカーを引いたり、下線を引いたりして目立たせる。
- 服薬カレンダーや一包化の提案: 飲み忘れが多い患者さんには、服薬カレンダーの活用や一包化を提案するなど、具体的なサポートを検討する。
3-4. 患者さんとの信頼関係を深める「プラスα」の心遣い
技術的な指導だけでなく、患者さんの心に寄り添う人間的な温かさが、信頼関係構築には不可欠です。
3-4-1. 傾聴と共感の姿勢
前述のアクティブリスニングにも通じますが、患者さんの言葉だけでなく、表情や仕草からも気持ちを読み取ろうとする姿勢が大切です。
- 「しんどそうですね」「何かお困りですか」など、患者さんの様子を見て声をかける。
- 「そうですか、それは大変でしたね」と、患者さんの状況を労う言葉をかける。
3-4-2. 状況に合わせた柔軟な対応
患者さんの中には、時間に余裕がない方、耳が遠い方、文字を読むのが苦手な方など、様々な方がいます。
- 視覚補助の活用: 文字を読むのが苦手な方には、写真や図を多めに使う。
- 筆談の活用: 耳が遠い方には、大きな声でゆっくり話すだけでなく、必要に応じて筆談も併用する。
- 短時間での要点伝達: 時間がない患者さんには、まず最も重要なポイントだけを伝え、後日改めて詳細を説明する機会を設ける提案をする。
3-4-3. 安心感を与える言葉遣い
- 肯定的な言葉を選ぶ: 「〜してはいけません」よりも「〜すると良いですよ」のように、肯定的な表現を心がける。
- 「もし何かあれば、いつでもご連絡ください」: 服薬指導が終わった後も、患者さんがいつでも相談できる窓口であることを伝えることで、安心感を与え、アドヒアランス向上にも繋がります。
3-4-4. 薬以外の健康情報も提供する
薬の相談だけでなく、生活習慣や健康維持に関するちょっとした情報提供も、患者さんとの関係を深めます。
- 「季節の変わり目なので、体調管理に気をつけてくださいね」
- 「インフルエンザが流行っていますので、手洗いうがいを忘れずに」
- 「高血圧の方には、塩分を控えた食事を心がけると良いですよ」
薬のプロとして、そして健康のプロとして、患者さんの生活全体をサポートする姿勢を見せることで、より深い信頼関係が生まれます。
4. 服薬指導から始まる「服薬フォローアップ」の重要性

服薬指導は、患者さんに薬をお渡しして終わりではありません。むしろ、そこが患者さんの服薬状況を継続的に支援する「服薬フォローアップ」の出発点となります。
4-1. 服薬フォローアップとは?
服薬フォローアップとは、薬剤師が患者さんの薬の使用状況や健康状態を継続的に把握し、薬の効果や副作用、服薬状況などを定期的に確認していくことです。これにより、患者さんが安心して治療を継続できるようサポートし、薬物治療を最適化することを目的としています。
服薬指導で患者さんのニーズや状態を丁寧に聞き取ることで、この服薬フォローアップに繋がるきっかけが生まれます。
4-2. なぜ服薬フォローアップが必要なのか?
一度の服薬指導ですべての情報を伝え、患者さんの疑問や不安を解消できるとは限りません。薬を飲み始めてから初めて出てくる疑問や副作用、生活の変化による服薬状況の変化など、時間が経つことで新たな問題が発生することもあります。
服薬フォローアップを行うことで、
- 飲み忘れや飲み間違いがないかを確認できる
- 予想される副作用が出ていないか、またそれに対する対処法を提案できる
- 薬の効果が十分に出ているかを確認し、必要に応じて医師に情報提供できる
- 患者さんの生活の変化に合わせて、服薬方法の工夫を提案できる
- 患者さんの不安や疑問を解消し、安心して治療を継続できる環境を整えられる
といったメリットがあります。これは、患者さんのアドヒアランス向上に直結し、最終的にはより良い治療結果に繋がります。
4-3. 服薬指導が服薬フォローアップに繋がる例
服薬指導時に患者さんのニーズや状態を注意深く聞き取ることが、後のフォローアップに繋がる具体例をいくつかご紹介します。
- 例1:副作用の確認
- 服薬指導時: 「この薬は、飲み始めに眠気が出ることがあります。もし、眠気がひどくて生活に支障が出るようでしたら、いつでもご連絡ください。」と伝えておく。
- 患者さんの反応: 「そういえば、最近日中に眠くて困っているんです。」という訴えがあった。
- フォローアップへ: 薬剤師は「では、次回来局時や、数日後に一度お電話で様子を伺ってもよろしいでしょうか?」と提案し、患者さんの同意を得てフォローアップを実施。後日改めて状況を確認し、必要であれば医師に情報提供や処方変更の提案を行う。
- 例2:飲み忘れの傾向の把握
- 服薬指導時: 「この薬は毎日飲む必要がありますが、飲み忘れやすいタイミングはありますか?」と尋ねる。
- 患者さんの反応: 「朝食後がバタバタしていて、よく飲み忘れることがあるんですよね…。」という情報が得られた。
- フォローアップへ: 薬剤師は「では、もし飲み忘れが続くようでしたら、週の途中で一度お電話して、何か工夫できることがないか一緒に考えさせていただけますか?」と提案。後日電話で状況を確認し、例えば「食卓に置く場所を変える」「携帯のアラームを活用する」「一包化を検討する」などの具体的なアドバイスを行う。
- 例3:効果の確認と生活指導
- 服薬指導時: 「この血圧の薬は、飲み始めてから1週間くらいで効果が出始めることが多いですが、ご自宅で血圧を測る習慣はありますか?」と尋ねる。
- 患者さんの反応: 「測ってはいるんですけど、なかなか安定しなくて…」という情報が得られた。
- フォローアップへ: 薬剤師は「血圧手帳をつけて、次回お持ちいただけますか?もし、来週になっても変化がないようでしたら、一度お電話でご相談いただければと思います。」と伝え、継続的な血圧管理のサポートを提案。後日、血圧値の推移を確認し、食事や運動面でのアドバイスも加え、必要であれば医師へ情報共有を行う。
このように、服薬指導で患者さんの「声」に耳を傾け、潜在的なニーズや問題点を見つけ出すことが、その後の適切な服薬フォローアップへと繋がっていくのです。そして、この継続的な関わりこそが、患者さんの健康維持・増進に大きく貢献する薬剤師の重要な役割となります。
5. 自信を持って服薬指導に臨むためのマインドセット

技術的なスキルだけでなく、服薬指導に臨む上での心構え(マインドセット)も非常に重要です。
5-1. 「完璧」を目指さない勇気
新人・若手薬剤師の皆さんは、「完璧に答えなければならない」「全ての知識を網羅しなければならない」というプレッシャーを感じやすいかもしれません。しかし、完璧を目指すあまり、かえって委縮してしまっては本末転倒です。
- 「分からないことは、調べてお伝えします」の精神: 全てを知っている必要はありません。分からないことがあれば正直に「確認して、改めてお伝えします」と伝え、後でしっかり調べて情報を提供する姿勢が信頼に繋がります。
- 毎日少しずつ学ぶ姿勢: 一度に全てを覚えようとせず、日々の業務の中で疑問に思ったことを一つずつ調べていく。この積み重ねが、着実な成長に繋がります。
5-2. ポジティブな自己肯定感を持つ
- 自分の成長を認める: 昨日の自分より、今日の自分が少しでも成長した点を認め、褒めてあげましょう。小さな成功体験を積み重ねることが、自信に繋がります。
- 失敗を恐れない: 失敗は成長の糧です。失敗から学び、次に活かすことができれば、それは失敗ではありません。
- 同僚や先輩との連携: 一人で抱え込まず、困ったことや悩んでいることがあれば、積極的に同僚や先輩に相談しましょう。経験豊富な先輩からのアドバイスは、きっとあなたの助けになります。
5-3. 患者さん中心の医療を意識する
常に「この患者さんにとって、何が一番良い選択肢なのか?」という視点を持つことが重要です。
- 患者さんの背景を理解する: 病気だけでなく、その人の生活、価値観、家族構成など、多様な側面を理解しようと努める。
- 「共にある医療」: 薬剤師が一方的に教え導くのではなく、患者さんと共に病気と向き合い、治療を進めていくパートナーであるという意識を持つ。
5-4. 健康の専門家としての自覚と誇り
私たちは、薬のプロフェッショナルです。そして、国民の健康を支える重要な役割を担っています。
- 自己研鑽の継続: 最新の薬の知識、疾患の知識、医療情報などを常に学び続ける。
- 薬剤師としての倫理観: 患者さんのプライバシー保護、情報管理など、高い倫理観を持って業務に取り組む。
- 地域医療への貢献: 地域住民の健康を守る「かかりつけ薬剤師」として、積極的に地域医療に貢献していく意識を持つ。
6. 薬剤師としてのキャリアを豊かにする服薬指導の未来

服薬指導のスキルを磨くことは、単に日々の業務をこなすだけでなく、皆さんの薬剤師としてのキャリアを大きく拓く可能性を秘めています。
6-1. かかりつけ薬剤師としての価値向上
服薬指導を通じて患者さんとの信頼関係を深めることは、かかりつけ薬剤師としての価値を高めることに直結します。患者さんから「この薬剤師さんになら何でも相談できる」と思ってもらえれば、継続的な関係性が築かれ、よりきめ細やかなサポートが可能になります。
6-2. 多職種連携における存在感
質の高い服薬指導は、医師や看護師など、他の医療専門職からの信頼も獲得することに繋がります。患者さんの服薬状況や副作用の情報を的確にフィードバックすることで、チーム医療における薬剤師の存在感が高まります。
6-3. 新しい薬局の機能への適応
在宅医療や地域包括ケアシステムの進展により、薬局の機能は多様化しています。患者さんの自宅に訪問して服薬指導を行う在宅服薬指導など、対面でのコミュニケーションスキルはますます重要になります。また、オンライン服薬指導の導入も進んでおり、新しいコミュニケーションの形にも適応していく必要があります。
6-4. 自己成長とキャリアアップ
服薬指導を通じて得られるコミュニケーション能力、問題解決能力、情報収集能力は、薬剤師としてだけでなく、社会人としても非常に価値の高いスキルです。これらのスキルは、将来的に管理薬剤師、店舗責任者、あるいは病院薬剤師や企業薬剤師など、多様なキャリアパスを築く上での大きな強みとなります。
7. 【新人・若手薬剤師必見】服薬指導の悩みを解決!患者さんとの信頼を築く方法まとめ

新人・若手薬剤師の皆さん、服薬指導は決して簡単な仕事ではありません。しかし、その一つ一つの指導が、患者さんの健康と生活の質を大きく左右する、非常にやりがいのある仕事です。
「何を話せばいいのか分からない」「うまく伝わらない」という悩みは、誰もが経験するものです。しかし、この記事で紹介したコミュニケーションスキル、知識を伝える技術、効率的な対応術、そしてポジティブなマインドセットを意識して実践することで、皆さんの服薬指導は確実に向上します。
焦らず、一歩ずつ。目の前の患者さんと真摯に向き合い、信頼関係を築くことを意識してください。そして、困ったときは一人で抱え込まず、同僚や先輩、そしてこの記事を参考に、自分らしい服薬指導の形を見つけていってください。
皆さんの服薬指導が、患者さんの「安心」と「笑顔」に繋がり、ひいては皆さんの薬剤師としてのキャリアを豊かにすることを心から願っています。
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