- 薬剤師の具体的な業務内容はどんなもの?
- 職場によって仕事内容はどう違う?
- 薬剤師になるには何が必要?
薬剤師と言えば、患者さまに薬を用意したり、薬の効果や飲み方の説明をしたりする仕事というイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか?
ですが、薬剤師の仕事はそれだけではありません。
薬剤師の活躍の場は調剤薬局や病院にとどまらず、ドラッグストア、製薬会社、行政機関、さらには教育・研究の分野など、実に幅広く広がっています。
調剤や服薬指導といった日常業務に加え、患者や地域住民の健康維持・増進に貢献する役割も担っています。
医療チームの一員として医師や看護師と連携し、最適な薬物療法を提案するほか、新薬の開発や安全性評価、医薬品情報の管理など、専門性の高い業務も多岐にわたります。
この記事では、そんな薬剤師の仕事の全体像をわかりやすく解説します。
- 調剤業務から服薬指導まで、薬剤師の主要な5つの業務内容
- 調剤薬局、病院、ドラッグストア、製薬会社、行政機関など、職場別の仕事の特徴
- 薬剤師に求められるスキルとキャリアパスの全体像
薬剤師の仕事内容
薬剤師は医薬品のプロフェッショナルとして、患者の健康を守る重要な役割を担っています。6年間の薬学教育を受け、国家試験に合格した専門家として、調剤だけでなく幅広い業務に携わります。
調剤業務
この業務で最も重要なのは処方監査です。処方箋の記載内容に間違いがないか、患者の症状に適した薬かどうか、他の薬との飲み合わせに問題がないかなどを慎重に確認します。

薬剤師による二重チェックが、患者の安全を守る最後の砦となっています。
服薬指導
この業務は薬剤師にのみ認められた重要な行為で、患者が薬を安全かつ効果的に使用するために欠かせません。
薬の飲み方だけでなく、副作用の可能性や食事との関係、保管方法なども丁寧に伝えます。

患者の生活スタイルや体調に合わせたアドバイスを提供することで、治療効果を最大限に引き出すサポートをします。
薬歴管理
薬歴管理では、患者一人ひとりの服薬情報を継続的に記録・管理します。
- 現在の服薬状況や生活習慣
- 過去にどのような薬を使用したか
- アレルギーの有無
- 副作用の経験
薬歴を適切に管理することで、重複投薬や薬の飲み合わせによる問題を防ぐことができます。また、長期間にわたって薬を使用している患者の治療経過を把握し、より効果的な薬物療法を医師に提案することも可能になります。
医薬品の管理と販売
OTC医薬品とは、「Over The Counter(オーバー・ザ・カウンター)」の略で、医師の処方箋がなくても薬局やドラッグストアなどで購入できる一般用医薬品のことです。
軽い症状のセルフケアに使われ、薬剤師や登録販売者の説明を受けて購入できます。
医薬品の管理では、薬の品質を保つためにさまざまな工夫が求められます。
- 適切な温度や湿度での保管
- 使用期限の管理
- 在庫量の調整と適正化

これらにより、医薬品の品質を維持し、安全に患者へ提供できる環境を整えます。
また、ドラッグストアなどでは、患者の症状に応じて適切な一般用医薬品(OTC医薬品)を選び、販売する業務も担います。
疑義照会
処方された薬の用量が通常と異なる場合や、患者の症状と処方内容が一致しない場合、薬の飲み合わせに問題がある場合などに疑義照会を実施します。
薬剤師が専門的な観点から処方内容をチェックし、必要に応じて医師に確認することで、医療事故を未然に防いでいます。
【職場別】薬剤師の仕事内容
薬剤師の活躍の場は多様です。それぞれの職場で求められる役割や業務内容が異なるため、自分に合った職場を選択することが重要です。
調剤薬局
調剤薬局の大きな魅力は、患者と長期的な関係を築けることです。定期的に来局する患者の健康状態の変化を見守り、地域の身近な相談相手として信頼される存在になれます。
かかりつけ薬剤師として患者から指名されることで、より深い関わりを持つことも可能です。
勤務環境面では、シフト制が一般的で、比較的プライベートの時間を確保しやすい職場です。パートやアルバイトとしての勤務も多く、ライフスタイルに応じた働き方を選択できます。
ドラッグストア
薬剤師や登録販売者の助言を受けながら、市販薬(OTC医薬品)を上手に活用して症状を改善するなど、「自分の健康は自分で守る」という考え方に基づく取り組みです。
処方箋なしで購入できる医薬品について、顧客の症状を聞き取り、最適な製品を提案します。健康食品や化粧品、日用品などの知識も必要となり、幅広い商品知識を身につけることができます。
365日営業している店舗も多いため、土日祝日の勤務や遅い時間帯の勤務が発生する可能性があります。ただし、給与水準は比較的高く、店舗によっては管理職へのキャリアアップの機会も豊富です。
病院薬局
入院患者に対しては、病棟で直接服薬指導を行います。注射薬や輸液の調製、抗がん剤の無菌調製など、専門性の高い業務にも携わります。

患者の治療経過を目で見て確認でき、自分が関わった薬の効果を実感できる貴重な機会となります。
病院によっては夜勤や当直が発生する場合があります。給与水準は調剤薬局やドラッグストアと比較するとやや低めですが、幅広い知識と経験を積める環境として、特に若い薬剤師に人気があります。
製薬会社
直接患者と接する機会は少ないものの、新しい薬を世に送り出すことで、より多くの人々の健康に貢献できます。
- MR(医薬情報担当者)として勤務する場合は、医師や薬剤師に対して医薬品の適切な情報を提供します。
- 研究開発部門では、新薬の候補物質の探索や臨床試験の実施、承認申請資料の作成などに携わります。
製薬会社で働く薬剤師の年収は、業界参考値としておおむね600万〜750万円前後が目安とされています。
特に品質管理や薬事、管理薬剤師として勤務する場合は、500万〜700万円程度となるケースが多いようです。
薬剤師全体の平均年収(約580万円)と比べても、製薬会社勤務はやや高い水準にあります。
参考元:令和5年賃金構造基本統計調査
⾏政機関
薬事監視員として、医薬品の製造業者や販売業者への立入検査や指導を行います。
衛生研究所などの公立研究機関では、医薬品の試験検査や研究を実施します。地域の感染症対策や食品衛生の向上など、公衆衛生全般に関わる業務も担当します。
公務員薬剤師は安定した雇用環境で働けることが大きなメリットです。求人数は限られていますが、社会全体の健康を守るという大きな使命を持った仕事として、やりがいを感じられます。
薬剤師の仕事内容のやりがい
薬剤師という職業には、他の職種では得られない独特のやりがいがあります。患者の健康に直接貢献できることや、専門性を活かせることが大きな魅力です。
患者の健康に貢献できる

服薬指導を通じて患者の不安を解消したり、適切なアドバイスによって症状が改善したりした際に、「ありがとう」と言われる瞬間は何物にも代えがたい喜びとなります。
定期的に来局する患者の場合、健康状態が徐々に改善していく様子を見守ることができます。チーム医療の現場では、薬の専門家として医師や看護師から頼りにされる機会も多くあります。
給与⽔準が⾼い
厚生労働省の調査によると大卒薬剤師の平均年収は約594万円です。大卒薬剤師の平均年収は日本の給与所得者全体の平均年収である約458万円を100万円以上も上回っています。
他の専門職の平均年収は以下のとおりです。
- 医師:1,429万円
- 弁護士:971万円
- システムエンジニア:550万円
- 看護師:508万円
- 臨床検査技師:497万円
初任給の段階から比較的高い給与を得られることが多く、経済的な安定を早期に実現できます。また、薬剤師は資格職であるため、パートやアルバイトとしての時給も高く設定されています。
柔軟にキャリアアップできる
薬剤師の資格は、様々な職場で活かすことができます。調剤薬局、病院、ドラッグストア、製薬会社、行政機関など、自分の興味や適性に応じて職場を選択できる自由度の高さが魅力です。
認定薬剤師や専門薬剤師などの資格を取得することで、より高度な専門性を身につけることも可能です。
管理薬剤師として薬局や店舗の運営に携わったり、エリアマネージャーとして複数店舗を統括したりするマネジメント職へのキャリアパスもあります。
認定薬剤師に関しては下記の記事で詳しく解説していますのでぜひ読んでみてください。
認定薬剤師とは?資格の種類や資格取得のメリット・取得後の活用法を紹介!
薬剤師の仕事内容に必要なスキル
薬剤師として活躍するためには、専門知識に加えて様々なスキルが求められます。これらのスキルを磨くことで、より質の高い医療サービスを提供できます。
薬剤の専⾨知識
薬剤師には、医薬品全般についての幅広く深い知識が不可欠です。薬の成分、効能、副作用、相互作用、使用方法など、薬学に関する専門的な知識を常にアップデートし続ける必要があります。
医療分野は日々進歩しており、新しい薬が次々と開発されています。最新の医薬品情報や治療ガイドラインを積極的に学び、患者に最適な薬物療法を提供するための知識を維持することが求められます。
コミュニケーション能⼒
服薬指導では、患者にわかりやすく薬の情報を伝え、不安や疑問を解消する必要があります。
患者の年齢や理解度に応じて、説明の仕方を工夫することが大切です。専門用語を避け、平易な言葉で丁寧に説明する技術が必要となります。チーム医療の現場では、医師や看護師など他の医療従事者との連携も重要です。
問題解決能⼒
薬剤師には、様々な問題に直面した際に適切に対処する能力が必要です。処方箋の内容に疑問がある場合や、患者から複雑な相談を受けた場合など、的確に判断し行動する力が求められます。

これらの問題を見逃さず、適切に対処することで、患者の安全を守ります。
薬剤師の仕事に就く⽅法
薬剤師になるためには、明確なステップを踏む必要があります。長い道のりですが、それだけに専門性の高い資格として価値があります。
薬学部を卒業する
全国に約80校の薬学部があり、国立大学、公立大学、私立大学で薬学教育が行われています。2006年度から薬学部は6年制となり、より充実した教育内容となっています。
薬学部では、薬に関する幅広い分野を体系的に学びます。主な学習内容は以下の通りです。
- 薬理学:薬の作用や副作用、体内での働きを学ぶ
- 薬剤学:薬の製剤化や適切な投与方法を学ぶ
- 薬物動態学:薬の吸収・分布・代謝・排泄のメカニズムを理解する
- 医療薬学:臨床現場での薬物療法やチーム医療を学ぶ
- 衛生化学・毒性学:薬の安全性や人体への影響を評価する
また、知識だけでなく実践力を養うために、病院や薬局での長期実務実習も必修となっています。
この実習では、実際の患者対応や処方箋の調剤、服薬指導などを体験し、薬剤師としての実践的スキルを身につけます。
薬剤師国家試験を受ける
試験内容は、物理・化学・生物、衛生、薬理、薬剤、病態・薬物治療、法規・制度・倫理、実務など、薬学の全般にわたります。合格率は例年68%から70%程度となっています。
薬剤師免許を取得する
薬剤師免許は一度取得すれば、更新の必要がなく生涯有効です。免許取得後は、調剤薬局、病院、ドラッグストア、製薬会社、行政機関など、様々な職場で活躍の機会があります。
まとめ
薬剤師は、医薬品の専門家として人々の健康を守る重要な職業です。調剤業務、服薬指導、薬歴管理、医薬品の管理と販売、疑義照会という5つの主要業務を通じて、安全で効果的な薬物療法を提供しています。
活躍の場は調剤薬局、病院、ドラッグストア、製薬会社、行政機関など多岐にわたり、それぞれの職場で異なる役割とやりがいがあります。

患者から直接感謝される機会が多く、給与水準も比較的高く、柔軟にキャリアアップできることが魅力です。
薬剤師として活躍するためには、薬剤の専門知識、コミュニケーション能力、問題解決能力が求められます。
医療の高度化や高齢化社会の進展により、薬剤師への期待とニーズはますます高まっています。専門性を活かして社会に貢献したい方にとって、薬剤師は充実したキャリアを築ける職業といえるでしょう。


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