
「薬剤師はいらない」との声を聞いて自分のキャリアに不安を感じていませんか?AIや自動化が進む中で、将来の働き方に悩む薬剤師は多くいます。変化の激しい時代に対応するためには、今から将来を見据えた準備をしておくことが大切です。
この記事では「薬剤師はいらない」と言われる理由を分析し、今後も求められる薬剤師になるための方法を解説します。記事を読めば将来への漠然とした不安が解消され、市場価値の高い薬剤師を目指すためにやるべきことが明確になります。
「薬剤師はいらない」との意見はありますが、仕事がなくなるわけではありません。専門性を高めて新たなスキルを身に付ければ、将来も必要とされる薬剤師であり続けられます。
「薬剤師はいらない」と言われる5つの理由

「薬剤師はいらない」と言われる理由は以下のとおりです。
- 業務の自動化が進んでいるから
- 対物業務が多いから
- 薬剤師の業務が見えにくいから
- 医薬分業の意義が理解されにくいから
- 薬剤師の数が飽和しているから
業務の自動化が進んでいるから
テクノロジーの進化により業務の自動化が進んでいることから「薬剤師はいらない」と言われています。今まで薬剤師が担当していた作業を機械やシステムが担うようになっています。自動化が進んでいる薬剤師の業務は以下のとおりです。
- 錠剤の取りそろえ・一包化
- 水薬・粉薬の計量・混合
- 調剤薬の最終チェック
- 薬の在庫管理・発注
- 電子薬歴の入力サポート
今まで薬剤師の手で行われていた作業が、正確でスピーディーな機械に置き換わりつつあります。
対物業務が多いから

薬剤師の仕事が対物業務中心に見えることも「いらない」と言われる理由の一つです。患者から見ると処方箋通りに薬を棚から取り出して準備する作業が、薬剤師の仕事の中心に見えてしまいます。裏側で行われている薬剤師の専門的な判断は、一般人にはなかなか伝わりません。
調剤ミスを防ぐための確認や薬の品質管理など、薬剤師は目に見えない専門的な業務を担っています。薬剤師の業務は患者にとってわかりづらく、本来の専門的な価値が正しく評価されないため「いらない」と言われています。
薬剤師の業務が見えにくいから
薬剤師の業務が患者から見えにくいことも「いらない」と言われる理由の一つです。薬剤師の業務は調剤室の中で行われるため、外からは何をしているのかわかりにくくなっています。調剤室の中で薬剤師が行っている仕事は以下のとおりです。
- 処方箋の監査
- 医師への疑義照会
- 薬歴確認・副作用チェック
薬剤師が行う専門性の高い業務が外部に伝わらず、薬剤師の本当の価値が正しく認識されにくい状況です。
医薬分業の意義が理解されにくいから

医薬分業の本当の意義やメリットが患者に理解されにくいことも「薬剤師はいらない」と言われる大きな理由です。病院から薬局に行くことが手間になったり余計な費用がかかったりするため、医薬分業は患者にとってデメリットが多く見えてしまいます。
医薬分業がもたらす安全性や専門性の価値が正しく伝わらないため、薬剤師の必要性が疑問視されています。
薬剤師の数が飽和しているから
薬学部の新設が相次いだ結果、薬剤師の数が増えすぎて飽和状態になっています。日本の人口が減っていく中で、薬剤師の数だけが増え続けると、需要と供給のバランスが崩れてしまいます。薬剤師の数は2045年に最大約12.6万人を超えると言われており、過剰に増えすぎていることが今の現状です。
薬剤師の数が増えて一人ひとりの価値が相対的に下がると、給料などの待遇が悪くなるのではないかと不安が広がっています。
これからの薬剤師に必要なスキル・知識4選

これからの薬剤師に必要なスキルや知識は以下のとおりです。
- デジタル技術の活用能力
- コミュニケーション能力
- 専門的な薬学知識
- 予防医療の知識
デジタル技術の活用能力
薬局ではデジタル化が急速に進んでいるため、これからの薬剤師はデジタル技術を使いこなす能力が欠かせません。デジタル技術を適切に活用すれば薬剤師の業務を大幅に効率化できます。薬剤師は以下のデジタル技術を使いこなす必要があります。
- 電子薬歴
- オンライン服薬指導
- 電子処方箋
- 薬局内デジタルツール
- チャット・SNS
デジタル技術を使いこなせば薬剤師の業務の効率が上がるだけでなく、患者により良いサービスを提供することにもつながります。
» 薬剤師がリモートワークできる職種6選とメリット・デメリットを解説
コミュニケーション能力

これからの薬剤師には患者や他の医療スタッフと良好な関係を築くためのコミュニケーション能力が不可欠です。薬を正しく安心して使ってもらうためには、相手との信頼関係を築く必要があります。患者の不安や悩みに耳を傾けて本音を引き出す力や、難しい専門用語をわかりやすく説明する力が薬剤師に求められています。
医師や看護師など他の専門家と協力して治療を進める力も薬剤師には必要です。在宅医療やオンラインでの服薬指導など、新しい医療の形が広がる中でもコミュニケーション能力は欠かせません。人間ならではの対話スキルは機械やAIに負けない薬剤師として活躍するための大きな強みとなります。
専門的な薬学知識
医療は日々進歩しており新しい治療法や薬が次々と登場しています。これからの薬剤師は医療業界の変化に対応するために、より専門的な薬学知識を身に付けることが大切です。
薬による治療は高度で複雑になっており、薬剤師の専門的な判断が必要な場面が増えています。患者一人ひとりに合わせた質の高い医療を提供するためには、薬剤師が新しい知識を学び続けることが必須です。薬剤師が専門性を高めることは、チーム医療に貢献することにもつながります。
予防医療の知識
高齢化が進む現代では病気の治療以上に、病気にならないための予防医療の知識が重要視されています。薬剤師が予防医療の知識を深めることで、地域住民の生活を支えて健康寿命を延ばすことに貢献できます。薬剤師が学ぶべき予防医療の知識は以下のとおりです。
- 生活習慣病
- ワクチン・感染症対策
- 健康診断・がん検診
- 重症化・再発防止
- セルフメディケーション
- ストレスケア
予防医療の知識がある薬剤師は人々の健康全般をサポートできる価値の高い存在になれます。
今後も求められる薬剤師として働くためのポイント5選

今後も社会に求められる薬剤師として働くためのポイントは以下のとおりです。
- 専門的な資格を取得する
- 英語や中国語などの語学を学ぶ
- 薬学的な思考力を身に付ける
- 在宅医療のスキルを磨く
- 地域医療に積極的に参加する
専門的な資格を取得する
専門的な資格を取得して自分の強みを作ることは、今後求められる薬剤師になるために効果的です。特定の分野で高い専門性を持つことで他の薬剤師との差別化ができるため、キャリアの可能性を広げられます。薬剤師におすすめの専門的な資格は以下のとおりです。
- 認定薬剤師・専門薬剤師
- プライマリ・ケア認定薬剤師
- 漢方薬・生薬認定薬剤師
- スポーツファーマシスト
- 認定実務実習指導薬剤師
専門的な資格を取得する過程で得られる知識や経験は、日々の業務に生かされます。薬剤師としての市場価値を高めるためにも、専門的な知識を学ぶことは有効な手段です。
英語や中国語などの語学を学ぶ

日本を訪れる外国人や国内で暮らす外国人が増えたことで、語学力の高い薬剤師の需要が高まっています。外国人と会話が通じれば状況を正確に把握できるため、安全な薬物療法の提供が可能です。語学力があることで転職やキャリアアップの際にも役立ちます。
語学力があればより専門性の高い情報にもアクセスしやすくなり、薬剤師としての知識を高めることにもつながります。
薬学的な思考力を身に付ける
これからの薬剤師は処方箋を読み取るだけでなく、薬学的な視点で患者の状況や薬の効果を総合的に判断できる能力が求められます。薬剤師が薬学的な思考力を身に付ければ医師や看護師との連携もスムーズになり、より適切な医療を提供可能です。
同じ症状でも患者の年齢や持病、服薬状況によって最適な薬は異なります。正しい判断を薬学的根拠にもとづいて行えるかどうかが、薬剤師としての価値を左右します。
薬学的な思考力を鍛えるには薬を選ぶ理由や、他の選択肢を自問自答する習慣を持つと効果的です。勉強会や研修に参加して知識をアップデートすれば、市場価値の高い薬剤師として活躍し続けられます。
在宅医療のスキルを磨く

今後も活躍できる薬剤師になるためには、在宅医療のスキルを磨くことは欠かせません。高齢化が進む中で病院ではなく住み慣れた自宅で治療を受けたいと考える人が増えているからです。在宅医療で求められるスキルは以下のとおりです。
- コミュニケーション能力
- フィジカルアセスメント
- 医療機器に関する知識
- 服薬管理の提案力
- 在宅医療に関する制度の知識
- 終末期医療に対する深い理解
在宅医療の現場では薬局の中だけでは経験できない実践的な知識や技術が必要です。薬剤師が在宅医療に関する専門的なスキルを身に付けると、患者一人ひとりの生活に深く関われます。在宅医療では患者やその家族、他の医療スタッフから直接感謝される機会も増えるため、薬剤師としてのやりがいも感じられます。
地域医療に積極的に参加する
地域医療に積極的に参加することは、今後も必要とされる薬剤師になるための重要なポイントです。高齢化が進む日本では病院だけでなく、地域全体で人々を支える仕組みづくりが重要視されています。薬剤師として地域の輪に加わることで、薬の専門家としてより多くの場面で力を発揮できます。
地域医療に積極的に参加して地域に溶け込むことで、住民から深い信頼を得ることも可能です。薬剤師の専門性を地域医療に生かすことで自分の価値も高まります。
将来性のある薬剤師になるためのキャリアパス

将来性のある薬剤師になるためのキャリアパスは以下のとおりです。
- 認定薬剤師にキャリアアップする
- 管理職やリーダー職に昇進する
- 薬局以外の職場に転職する
認定薬剤師にキャリアアップする
将来性のある薬剤師としてキャリアを築くうえで、認定薬剤師の資格取得は有効な選択肢です。特定の分野で深い知識や技術を持つ専門家であることを証明できるため、他の薬剤師との差別化を図れます。認定薬剤師の資格を取得することで、かかりつけ薬剤師としてより質の高い服薬指導を患者に提供できます。
専門性が評価されて給料の交渉で有利に働く可能性があることも、認定薬剤師の資格を取得する大きなメリットです。認定薬剤師の資格を維持するには継続的な学習が必要なため、常に新しい知識が身に付きます。eラーニングで単位を取れる制度もあり、認定薬剤師は仕事や子育てと両立しながら目指せる点も魅力的です。
管理職やリーダー職に昇進する

管理職やリーダー職への昇進は、AIに代替されにくいマネジメントスキルが身に付くキャリアパスです。人や組織を動かす能力は、これからの時代に薬剤師として活躍するために重要なスキルです。管理職やリーダー職を目指すためには、普段から以下の行動を意識しましょう。
- 仕事に責任感を持つ
- 後輩指導・新人教育を積極的に行う
- 経営視点を持って業務改善に取り組む
- 外部研修やセミナーに参加する
日々の業務の中でチームをまとめる経験を積むことで、薬剤師としての市場価値を高められます。管理職やリーダー職を目指す場合、上司や経営層にキャリアプランをあらかじめ伝えておくことをおすすめします。将来を見据えてマネジメント能力を養うことが昇進への近道です。
薬局以外の職場に転職する
薬剤師としての経験を生かして薬局以外の職場に転職することも、将来の可能性を広げるための有効なキャリアパスです。薬剤師が持つ薬の専門知識は医療のさまざまな場面で求められています。薬剤師の資格を生かせる職場は以下のとおりです。
- 製薬会社
- 治験関連企業
- 病院
- 医薬品卸売販売業
- 行政
- 医療系IT企業
新しい知識を身に付けて薬局とは異なる環境で働くことで、今までとは違った視点から医療に貢献できます。自分のライフプランに合わせて新しい分野に挑戦することで、薬剤師としての価値をさらに高められます。
「薬剤師はいらない」と言われないために今できる準備を始めよう

業務の自動化や専門性の見えにくさから「薬剤師はいらない」と言われることがあります。しかし、薬剤師としての高い専門性は、医療現場にはなくてはならない存在です。今後も必要とされる薬剤師であり続けるためには、患者に寄り添ったコミュニケーション能力や専門的知識を磨く必要があります。
キャリアプランの検討や資格取得、デジタル技術の習得など、AIや社会変化に対応するために今からできる準備は多くあります。興味のあることから少しずつ行動することが、医療現場で活躍できる薬剤師になるための第一歩です。
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