
薬剤師は働き方の選択肢が豊富なため、キャリアについて考える機会が多くあります。一方で、転職回数が多いと採用で不利になるのではないかと不安になる方もいるかもしれません。
この記事では薬剤師の平均的な転職回数や、転職回数が多くても不利にならないための具体的な戦略を解説します。
この記事を読めば、自信を持って次のキャリアを考えるための具体的な行動計画が立てられます。
薬剤師の転職回数が多くても、理由を前向きに説明できれば不利になるとは限りません。
薬剤師の転職で大切なことはこれまでの経験に一貫性を持たせ、今後のキャリアプランを明確に示すことです。
薬剤師の転職回数の実態

薬剤師は専門性と需要の高さから転職しやすい職業ですが、転職回数は年代や性別、勤務先によって大きく異なります。薬剤師の転職回数に関する以下の3点を解説します。
薬剤師全体の平均転職回数
薬剤師の平均転職回数は約2.1回で、多くの薬剤師が転職を経験しています。大手転職サイトの調査によると、薬剤師全体の約75%が転職を経験したことがあるという結果が出ています。4人に3人は転職を経験している計算になり、薬剤師にとって転職は珍しいことではありません。
転職経験者の内訳は転職回数が「1回」の人が最も多く、次に「2回」「3回」と続きます。転職した人の約75%は転職回数が3回以内に収まっている状況です。年齢が上がるにつれて薬剤師の転職回数も増加する傾向があります。
他業種との比較

薬剤師の転職回数は他の業種と比較して多い傾向にあります。薬剤師の転職が比較的多い理由は、薬剤師ならではの働き方や業界の特性が関係しています。全国どこでも求人が見つかりやすい点は国家資格である薬剤師の魅力です。
薬剤師は女性の割合が高いため、結婚や出産といったライフステージの変化に合わせて働き方を変える方が多くいます。全産業の平均離職率と比べると、薬剤師が含まれる「医療・福祉」業界の離職率は高水準です。
スキルアップを目指して職場を変える薬剤師も多くいます。薬剤師は調剤薬局や病院、ドラッグストアなど活躍の場が広いため、転職しやすい環境にいると言えます。
男女別・勤務先別の傾向
薬剤師の転職回数は性別や働く場所によって傾向が異なります。薬剤師は男女でキャリアに対する考え方が違い、職場によって働き方や求められる専門性も異なるためです。
女性の薬剤師は結婚や出産といったライフイベントを機に働き方を見直す方が多くいます。女性の薬剤師は育児と両立しやすいパートや時短勤務の仕事を探すため、転職回数が多くなる傾向にあります。
男性の薬剤師は年収アップや管理職への昇進といったキャリアアップを目的とした転職が中心です。病院では専門性を高めるために、1つの職場で長く働く薬剤師が多くいます。より高度な知識を求めて大学病院などへ転職するケースも見られます。
調剤薬局やドラッグストアは求人が多く転職しやすいため、転職回数が多くなりがちです。製薬会社は専門性が高く待遇も良いため、転職をする薬剤師は少ない傾向にあります。個人のライフプランや働く場所の環境が薬剤師の転職回数に大きく影響しています。
薬剤師が転職回数を重ねる理由

薬剤師が転職回数を重ねる理由は以下のとおりです。
職場環境に変化があったから
職場環境の変化は薬剤師が転職を考える大きなきっかけになります。会社の経営方針の変更や人間関係の悪化は、仕事へのやる気や心身の健康にまで影響を及ぼす可能性があります。転職理由として挙げられる職場環境の変化は以下のとおりです。
- 仕事量の増加
- 職場の合併や買収
- 残業の常態化
- 異動や転勤
- 子育てへの理解不足
働く環境が大きく変わると今の職場で働き続けることが困難になり、薬剤師が転職を決意するケースがあります。
ライフスタイルに変化があったから

結婚や出産、介護といったライフスタイルの変化は薬剤師が転職を考えるきっかけになります。育児や介護と仕事を両立させたいといった思いから、働き方の条件を変えたいと考える薬剤師は多くいます。
人生の節目に合わせて働き方を変えることは、長く仕事を続けていくうえで大切な選択です。自分の生活を第一に考えた結果、転職を決意する薬剤師もいます。
キャリアアップに挑戦したいから
より専門的な知識を身に付けたり、責任のある役職に就いたりするために転職を選ぶ薬剤師もいます。キャリアアップの目標は人それぞれです。以下の目的で転職活動を始める薬剤師は多くいます。
- 専門薬剤師や認定薬剤師の資格取得を目指す
- 管理薬剤師や薬局長といった管理職に挑戦する
- 成果がきちんと評価される職場で年収を上げる
- 在宅医療や漢方など、興味のある分野の専門性を深める
- 調剤業務だけでなく、製薬会社や行政機関などへ活躍の場を広げる
- 新規店舗の立ち上げなど、経営に近い業務に携わる
前向きな理由での転職は自分の市場価値を高めるための大切な一歩です。自分の将来像をしっかり描いたうえでの転職は、採用担当者にも良い印象を与えます。
薬剤師の転職回数が多いとされる基準

転職回数が「多い」と判断される基準は1つではなく、年齢や社会人経験、採用担当者の視点によって変わります。薬剤師の転職回数に関する以下の2点を解説します。
年代別の「多い」とされる基準
転職回数が「多い」と見なされる基準は年齢によって異なります。若い世代ほど少ない転職回数でも「多い」と判断されやすい傾向にあります。年代ごとの転職回数が多いとされる目安は以下のとおりです。
- 20代:3回以上
- 30代:4回以上
ただし、勤続年数が1年未満での転職を繰り返している場合は、回数以上に多いと判断される可能性があります。
採用担当者が「多い」と感じるライン
「転職が多い」と感じやすいケースは以下のとおりです。
- 20代で3回以上、30代で4回以上転職経験している
- 平均勤続年数が3年未満である
- 1年未満での転職を繰り返している
- 転職理由に一貫性がない
- 年齢に見合うスキルや経験がない
採用担当者は転職回数の数字だけを見ているわけではありません。勤続年数や転職理由など、これまでのキャリア全体を見て転職回数が「多い」かを判断します。採用する側は「うちの職場でもすぐに辞めてしまうのではないか」という点を心配しているためです。
薬剤師は転職回数が多いと不利になるのか解説

薬剤師は転職回数が多いと不利になるのかを以下の観点から解説します。
採用側の懸念点
転職回数が多いと採用担当者は不安を感じ、選考で不利になる場合があります。採用する側は採用者に長く働いてほしいと考えているためです。何度も転職していると「またすぐに辞めるのではないか」「何か問題があるのでは」と心配されてしまいます。
転職を成功させるためには、採用側の懸念点を面接などでうまく解消することが重要です。
給与やキャリアへの影響
短期間での転職は給与やキャリアアップの面で不利になる可能性があります。1つの職場での経験が浅い薬剤師は専門性を深めにくく、キャリアに一貫性がなくなります。転職が多いと薬剤師としてのキャリアアップの機会を逃してしまう恐れもあるため注意が必要です。
しかし、目的を持った転職であれば薬剤師にプラスに働く場合もあります。薬剤師は調剤薬局や病院など多様な職場を経験することで仕事の幅が広がり、キャリアの選択肢を増やすことにつながります。
薬剤師が転職を見送ったほうが良いケース

転職を検討中の薬剤師の方は勢いで行動する前に、転職が最適な選択なのかを慎重に判断してください。薬剤師が転職を見送ったほうが良いケースは以下のとおりです。
明確な理由がない場合
今の職場に不満はないけれどなんとなく辞めたいと感じる場合、転職は考え直しましょう。はっきりとした目的がないまま転職活動を始めても、新しい職場でまたなんとなく辞めたいと感じる可能性が高いためです。
以下のような気持ちで転職を考えている場合は、衝動的に行動する前に冷静に自分を見つめ直す時間が必要です。
- 漠然とした不満・マンネリ感
- 他者への焦り
- 一時的な感情・ストレス
- 現実逃避
- 根拠のない理想
衝動的な気持ちは誰にでも起こりうることですが、勢いで転職を決めると後悔につながる恐れがあります。なぜ自分が転職したいのか、根本的な理由をじっくり考えることが、薬剤師として満足のいくキャリアを築くための第一歩になります。
» 薬剤師は転職しない方がいい?迷ったときの解決法や相談先を解説
キャリアプランが不明確な場合

薬剤師としての将来像やどんな働き方をしたいかといったキャリアプランがはっきりしていない場合、転職は見送りましょう。自分の軸がないまま転職活動を始めると、転職すること自体が目的になってしまうためです。目先の給与や休日といった条件だけで職場を選んでしまうと、期待していた仕事内容とのミスマッチにつながります。
期待していた仕事内容とのミスマッチを避けるためにも一度立ち止まって自己分析を行い、将来のビジョンを明確にしましょう。
現職で解決できる課題がある場合
転職を考える前に、現在の職場で抱えている悩みを解決できないかを考えましょう。部署異動や人間関係の調整、残業時間の削減は上司や会社に相談することで状況が改善する場合があります。新しい業務に挑戦したり、時短勤務や勤務日数を調整したりすることで、転職せずに満足のいく働き方が見つかる可能性があります。
すぐに転職活動を始めるのではなく、今の環境でできることを探してみてください。
転職回数が多い薬剤師が転職に成功するための戦略

転職回数の多さに不安を感じる薬剤師もいますが、適切な戦略があれば成功できます。転職回数が多い薬剤師が転職に成功するためのポイントは以下のとおりです。
面接で前向きな転職理由を伝える
面接で転職理由を前向きな言葉で伝えることが、採用を勝ち取るためのポイントです。採用担当者は応募者が入社後に意欲的に働き、長く貢献してくれる人材かを見極めたいと考えています。転職の理由が人間関係や待遇への不満であっても、前職への不満をそのまま伝えると採用担当者に不安を与える可能性があります。
面接では転職のきっかけを将来への希望や目標に変換して話しましょう。面接で以下のポイントを意識すると、採用担当者に良い印象を与えられます。
- 転職理由をポジティブな目標へと変換する
- 具体的なキャリアプランを説明する
- 経験・スキルをアピールする
応募先の理念や事業内容を調べ、応募先でなければならない理由を明確にしましょう。転職理由を自分の成長意欲や企業に貢献したいという気持ちに結びつければ、採用担当者に安心感と期待感を与えられます。
一貫性のあるキャリアプランを示す

転職回数が多くてもこれまでの経験と将来のビジョンに一貫性があれば、採用担当者を安心させられます。採用担当者に一貫したプランを伝えることで「将来を見据えて行動できる人材だ」と評価されやすくなります。面接では過去の職歴を振り返り、それぞれの経験が次のステップにどうつながったかを説明しましょう。
自分のキャリアストーリーを整理して伝えることで、転職はキャリアアップのための前向きな選択肢であることをアピールできます。
職務経歴書で保有資格やスキルをアピールする
転職回数が多くても職務経歴書で自分の経験やスキルをしっかりアピールできれば、採用担当者に良い印象を与えられます。職務経歴書では自分の強みを客観的に伝え、即戦力として活躍できることを示しましょう。資格や具体的な業務経験は自分の能力を証明する強力な武器になります。
情報をわかりやすく整理して記載することで、自分の価値を効果的に伝えられます。
転職エージェントを活用する
転職回数が多い薬剤師が転職を成功させるには、転職エージェントの活用が効果的です。転職エージェントでは、キャリアアドバイザーが一人ひとりの状況に合わせて無料でサポートしてくれます。転職エージェントで以下のサポートを受けることで、転職活動を有利に進められます。
- 応募書類の添削・面接対策
- 非公開求人・企業の紹介
- 時短勤務・残業なしの求人の紹介
- 待遇面の交渉代行
- 内部情報の提供
- 面接日程の調整代行
転職エージェントの手厚いサポートを受けることで、回数が多くても自信を持って転職活動を進められます。
転職回数が多い薬剤師でもキャリアアップは可能

転職回数が多くてもキャリアアップは十分可能です。薬剤師の転職回数は年代や性別、勤務先によって異なります。さまざまな職場経験は環境適応力や幅広い知識の証明となります。面接では転職理由を前向きなステップとして明確に伝えれば、採用担当者に好印象を与えることが可能です。
転職回数をネガティブに捉えず、これまでの経験を自信に変えて自分らしいキャリアを築きましょう。
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