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漢方薬剤師とは?資格の取得方法やキャリアパスを解説

  • 漢方薬剤師って普通の薬剤師と何が違う?
  • 漢方の専門資格はどうやって取得する?
  • 漢方薬剤師の働き方や将来性は?

現代の医療現場では、西洋薬による対症療法だけでは解決できない慢性的な不調や根本治療を求める患者さんが増え続けています。

そのような中、漢方薬や生薬といった東洋医学の知見を専門的に活用し「一人ひとりの体質に合わせたオーダーメイドの治療」を提供する漢方薬剤師への注目が高まっています。

専門性を深め、ほかの薬剤師との差別化を図りたいと考えるあなたにとって、漢方は新たなキャリアを切り拓くカギとなるでしょう。

この記事では、漢方薬剤師の役割から資格の取得方法・具体的なキャリアまで、あなたが知りたい情報を詳しくまとめました。

この記事を最後まで読めば、漢方薬剤師として活躍する具体的なロードマップが描けます

目次

漢方薬剤師とは漢方薬や生薬を専門的に扱う薬剤師

漢方薬剤師とは、漢方薬や生薬に関する知識を有し、患者さん一人ひとりの症状や体質に合わせて調剤できる能力・適性を持つ薬剤師のことです

ここでは、漢方薬剤師と一般薬剤師との違いや、その役割について解説します。

漢方薬剤師と一般的な薬剤師の違い

漢方薬剤師と一般的な薬剤師との違いについて以下にまとめました。

漢方薬剤師と一般的な薬剤師の相違点

漢方薬剤師と一般的な薬剤師では、学習の基礎とする医学体系が異なります。

一般的な薬剤師は西洋医学をベースにしていますが、漢方薬剤師の基礎は東洋医学です

一般的な薬剤師は、医師の処方せんに基づいて調剤を行い、薬効や副作用などを評価しますが、漢方薬剤師は自ら漢方薬を調合することも。

コタロ
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漢方を調合するには『』と呼ばれる考え方を身につけなければなりません。

証(しょう)とは

その人の状態(体質・体力・抵抗力・症状の現れ方などの個人差)をあらわすもの。

本人が訴える症状や、体格や年齢・顔色などの要素から総合的に判別する。

漢方薬剤師は、西洋薬ではカバーしきれない慢性的な不調体質改善の分野で力を発揮し、一般薬剤師とは一線を画す専門的な役割を担います。

漢方薬剤師の役割と重要性

高齢化や生活習慣の変化が進む現代において、漢方薬剤師の役割はますます重要になっています。

東洋医学のアプローチは、西洋医学の対症療法が限界を迎える分野において、患者のQOL(生活の質)向上に大きく貢献します。

症状だけを抑えるのではなく「なぜその症状が出ているのか」という体質の根本的な原因を探るのは、東洋医学ならではの考え方です。

健康意識の高まりにより、自分で健康管理を行うセルフメディケーションが注目されています。

漢方薬剤師は、OTC(市販薬)として販売されている漢方薬の適切な選び方や使い方の指導を通じて、患者自身で健康を管理する力をサポートします。

漢方薬剤師のおかげで、患者さんは多様な選択肢の中から、自分に最も適した治療を受けられるようになるでしょう。

西洋医学と東洋医学の両方に精通する漢方薬剤師は、両医学の利点を活かした統合医療の架け橋となり得ます。

漢方薬剤師の主な業務内容

漢方薬剤師の主な業務内容は以下の通りです。

漢方薬の処方提案

漢方薬剤師の最も専門性の高い業務のひとつが、漢方薬の処方提案です。

一般的な薬剤師は処方箋に対する鑑査・調剤が主な業務ですが、漢方薬剤師は、患者さんの証や症状の全体像を見極め、最も効果的と考えられる漢方薬を提案する役割を担います。

医師が漢方薬を処方する際、その選択や用法・容量について、東洋医学の知見から適切な処方となるよう提案するのが漢方薬剤師の仕事です。

慢性的な不調をセルフケアしたい患者さんに対しては、症状や体質に合ったOTC漢方薬を選び、生薬の知識に基づいてアドバイスします。

患者のカウンセリング

漢方におけるカウンセリングは、単に症状を聞き取るだけでなく、『証』の把握に欠かせません。漢方医学では「四診(ししん)」と呼びます。

  • 望診(ぼうしん)
    顔色、肌の状態、舌の状態(舌診)など、見た目から体の状態を観察する
  • 聞診(ぶんしん)
    声の調子、咳の音、においなど、音やにおいから情報を得る
  • 問診(もんしん)
    現在の症状はもちろん、生活習慣、睡眠、飲食、寒熱の好みなど、詳細な情報を質問する
  • 切診(せっしん)
    脈を診みたり(脈診)、お腹を触ったり(腹診)することで、体内の状態を把握する

薬剤師は患者さんに触れることはできませんが、四診のノウハウを併せ持つのが漢方薬剤師です。

四診を通じて患者さんの心身全体のバランスを把握し、その情報に基づいて処方提案をするため、高い傾聴力質問力が求められます。

服薬指導

特に漢方薬局に勤める場合、一般的な服薬指導に加えて、さまざまな聞き取りや指導を行います。

患者さんの体質から生活習慣や食事習慣・精神的ストレスなども考慮し、個別にアドバイスします。

漢方薬は即効性よりも体質改善や根本治療に重きを置くため継続服用が基本です。ゆえに、患者さんとの信頼関係を築く必要があります

コタロ
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患者さんからの相談内容も多岐にわたります。

西洋薬との相互作用や副作用に対する不安など、丁寧な説明が必要です。

漢方薬でも間質性肺炎偽アルドステロン症などの副作用は報告されています。あらかじめ、副作用の初期症状・早期発見ポイントは伝えておかなければなりません

漢方薬の調剤

一般的な処方せん対応だけでなく、漢方薬における加減処方やエキス剤の適切な選定などをおこないます。

煎じ薬を用いる場合、分量調整から煎じ時間・保存方法の指導まで、調剤業務は非常に繊細です。これらの調剤業務を行うには、漢方薬特有の処方形式を理解しておかなければなりません

漢方の知識を体系的に理解していること、患者さんごとの証を見極めが必要です。

漢方薬剤師のメリット

漢方薬剤師のメリットは以下の通りです。

専門性の高い知識が身に付く

漢方薬剤師は専門性の高い知識が身に付きます。漢方薬剤師になるための勉強は、一般的な薬学教育では深く扱わない、東洋医学の根幹まで学びます。

漢方学・中医学などを学ぶと、病態や治療法に対する理解が多角的に。薬剤師としての医療観が大きく広がり薬剤師としての提案力が飛躍的にアップするでしょう。

「この患者さん治療は限界かな..」と感じる場面でも、新たな治療の糸口を見つけられるようになります。

転職に有利になる

漢方薬剤師の専門性は、現在の薬剤師市場における強力な差別化ポイント。転職やキャリアアップにおいて大きな武器となります。

漢方の専門知識を持つ薬剤師の数は、一般的な薬剤師と比べて多くありません。漢方薬局や漢方外来のある総合病院、漢方薬を取り扱うドラッグストアなどでは需要が高いです。

コタロ
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漢方薬局など、あなた自身が独立開業するのもよいでしょう。

漢方薬・生薬認定薬剤師などの専門資格を取得すると、病院や薬局で資格手当の対象となる場合もあり、待遇面での優遇が期待できます。

専門性への投資が、そのまま昇給・昇格給与という形でリターンとして返ってきやすくなります。

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漢方薬剤師に必要な資格

漢方薬剤師として働くために特別な資格は必要ありません。ここでは、漢方に関連する認定資格を紹介します。

専門的な知識と技能を証明し、患者さんや医師からの信頼を得るには、認定資格の取得が非常に有利となります。

漢方薬・生薬認定薬剤師

繰り返しになりますが、漢方薬剤師として働くために特別な資格は必要ありません。ですが、漢方の専門家であると証明する制度があります。それが、漢方薬・生薬認定薬剤師制度です。


医療用漢方や生薬に関する専門的な知識・スキルを有していると証明する制度です。日本薬剤師研修センター(JPEC)と日本生薬学会が実施します。

決められた研修を受講し、薬用植物園実習に参加した後、試験を受けて合格すれば漢方薬・生薬認定薬剤師という資格が取得できます。

論文の発表や一定期間以上の勤務歴といったものは必要ないため、比較的取得しやすい資格のひとつといえるでしょう。

合格者には「漢方薬・生薬認定薬剤師証」が発行されますが、この認定証は3年おきに研修に参加し、更新する必要があります。 

漢方アドバイザー

漢方アドバイザーは、日本漢方医学教育研究センターやその他の民間団体が認定する資格。団体によっては、漢方コーディネーターなど、団体によって呼称が異なります。

各団体が実施する通信講座を受講し、認定試験に合格することで取得できる資格です。

薬剤師でなくても取得できる資格ですが、薬剤師が取得すると『漢方支援薬剤師』と呼ばれる特別な資格が得られます。

漢方アドバイザーは、漢方薬・生薬認定薬剤師よりも取得しやすい資格です

漢方分野への足がかりとして、あるいはカウンセリング力を強化したいと考える薬剤師におすすめの資格といえるでしょう。

漢方薬剤師に必要なスキルや経験

漢方薬剤師に必要なスキルや経験は次の通り。

漢方薬剤師として活躍するには、知識だけでなく、患者さんとの治療に結びつけるための実践的なスキルが欠かせません。

コミュニケーション能力

コミュニケーション能力は、漢方薬剤師にとって西洋医学における検査データに匹敵するほど重要な情報収集の手段となります。

漢方医学の診断の核となる四診のうち、特に『問診』では、現在の症状だけでなく食生活や睡眠の質・ストレス・冷えの有無など、多岐にわたる生活背景を患者から聞き出す必要があります。

ベースとなるのは、深い傾聴力と共感力です。漠然とした不調や言い出しにくい悩みなど、患者さんに心を開いてもらい、信頼が得られるような能力は欠かせません。

声のトーンから顔色・姿勢・体質まで、非言語的な情報からも『証』に関わるヒントを読み取るスキルが求められます。

わかりやすい説明力も必要です。中医学の概念を専門用語を使わずに分かりやすく説明し、患者さんが納得して治療に専念できるような能力が求められます。

医療用漢方に関する専門的な知識

漢方薬剤師は、一般の薬剤師よりもはるかに深いレベルで、個々の漢方薬とそれを構成する生薬に関する知識が求められます。

医療用エキス剤として承認されている約150処方の効能効果はもちろん、各処方を構成する生薬の個々の薬能(効き目)や生薬同士の相互作用を正確に理解しておかなければなりません。

中医学では、病名ではなく『証』に合致しなければ効果が出ないと考えます。

「この体質の患者さんには、この生薬が最も適している」という処方選択の根拠を、臨床経験を通じて確立していくことが求められます。

コタロ
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西洋薬との飲み合わせや、生薬の重複投与のリスクを的確に判断する知識は必須です。

漢方薬にも副作用や相互作用が存在します。特に、複数の医療機関を受診している患者さんは注意が必要です。

中医学の理解

日本の医療で使われる漢方は、中国伝統医学である中医学の理論を基に発展してきました。そのため、漢方薬剤師として活躍するには、中医学の基本的な考え方を把握することが不可欠です

『陰陽五行(いんようごぎょう)』『気・血・水(き・けつ・すい)』『臓腑(ぞうふ)』といった、中医学の基本的な理論を理解すると、

  • なぜその漢方薬を
  • なぜそのタイミングで服用すべきか

論理的な説明ができるようになります。

こうしたスキルは座学だけでなく、漢方薬局や漢方外来などで臨床経験を積むことによって磨かれていくものです。

漢方薬剤師になるためのステップ

漢方薬剤師になるためのステップは次の通りです。

基本資格の取得

大前提として、薬剤師国家試験に合格し、薬剤師免許を取得している必要があります。これは、すべての薬剤師業務を行うための必須条件です。

薬剤師免許取得後、すぐに漢方分野の道へ進むのはもちろん可能ですが、できれば数年間の臨床経験を積むことをおすすめします。

病院や調剤薬局で働く中で、医薬品の知識から患者対応・医療連携の基礎を習得しておくことは、東洋医学と西洋医学の統合的な視点を持つ上で非常に役立ちます。

漢方の基礎を効率的に学ぶには、漢方外来のある病院または漢方薬の取り扱いが多い調剤薬局やドラッグストアに勤務するのが近道です。

特に、生薬の調剤(煎じ薬)を行っている漢方専門薬局であれば、実践的なスキルと中医学の深い理論を肌で感じながら学べます。

専門研修と試験

ここでは、漢方薬・生薬認定薬剤師の資格取得法について解説します。

漢方薬・生薬認定薬剤師になるには、漢方薬・生薬研修会の受講試問合格が必須です。漢方薬・生薬研修会には、講義研修と薬用植物園実習があります。

講義研修は全部で9回行います。研修会場で講義を受ける座学研修または、座学研修の動画をオンラインで視聴するインターネット研修のいずれかを受講してください。

薬用植物園実習は、必ず1回受講しなければなりません。春期・秋期に、全国各地約50カ所の薬用植物園で実施されます。

研修受講にかかる費用は60,500円(税込)です。テキスト代や試問料、薬用植物園実習の費用が含まれます。

試問の受験資格は以下の通りです。

  • 漢方薬・生薬研修会の出席率が80%以上
    (※座学研修の場合、インターネット研修は100%)
  • 薬用植物園実習レポートの提出・合格

試問については、過去の試験問題と解答が公表されています。設問数は年度によって異なります。
» 過去の試問と解答|日本薬剤師研修センター

漢方薬剤師のキャリアパス

漢方薬剤師の主なキャリアパスは以下の2つになります。

漢方薬局に勤める

漢方薬剤師の専門知識とカウンセリング力を最大限に活かせる場所が漢方薬局です。

承知いたしました。漢方薬剤師として資格とスキルを身につけた後の「キャリアパス」について解説します。


漢方薬剤師のキャリアパス

漢方薬剤師の資格と専門性は、従来の薬剤師の枠を超えた多様なキャリアの選択肢を提供します。ここでは、特に専門性を活かせる代表的な二つのキャリアパスを紹介します。

漢方薬局に勤める

漢方薬剤師の専門知識とカウンセリング能力を最大限に活かせる場所が、漢方専門薬局漢方相談薬局です。

漢方専門薬局では、患者さんとのカウンセリングを元に生薬を煎じたり、OTCを推奨したりするのが業務の中心となります。

漢方治療は長期にわたるケースが多いため、患者さん一人ひとりと深く、継続的な信頼関係を築きながら、根本的な体質改善をサポートするやりがいを感じるでしょう。

漢方薬局での実務経験を積み、経営や運営のノウハウを習得することで、将来的に自身で漢方相談薬局を開業するという選択肢も開けます。

漢方薬の研究や教育に携わる

漢方薬剤師には臨床現場だけでなく、教育・学術分野や製薬業界で活躍する道もあります。

例えば、漢方薬を製造販売する企業内の学術担当や研究部門で働く可能性もあるでしょう。場合によっては、薬学生の教育・指導を行う講師として活躍する道も。

漢方薬剤師は、臨床から研究・教育に至るまで、幅広い分野であなたのキャリアの可能性を大きく広げてくれる可能性があります。

まとめ

漢方薬剤師とは、漢方薬や生薬に関する知識を有し、患者さん一人ひとりの症状や体質に合わせて調剤できる能力・適性を持つ薬剤師です。

単に漢方薬を調剤するだけでなく、中医学の深い知識を駆使し、患者さんの体質や根本的な原因にアプローチする専門家が漢方薬剤師です。

漢方薬剤師として活躍するには、必ずしも専門資格は必要ありませんが、漢方薬・生薬認定薬剤師を取得することでキャリアアップに直結します。

高齢化社会やセルフメディケーションの進展に伴い、漢方薬剤師の需要と将来性はますます高まっています。

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