
正直に言います。薬剤師という「業界」は、オワコンに向かっています。
薬剤師の数は飽和状態にあり、AIの導入で単純作業は減り続け、診療報酬の引き下げで給与も上がりにくい。これが今の薬剤師業界の現実です。
ただし、医療の需要がゼロになることはありません。時代の変化に対応し「医療従事者」として価値を発揮できる限り、あなた自身がオワコン化する心配はなくなります。
この記事では「厳しい業界の中で、生き残れる薬剤師になるための具体策」を解説します。
この記事を読み終えたとき、あなたが今日から何をすべきかが明確になります。
薬剤師がオワコンと言われる3つの理由

かつて「安定した職業」の代名詞だった薬剤師。しかしいま、業界の雲行きは怪しくなっています。その理由は主に3つです。
需要に対して薬剤師の数が急増している
最大の問題は、働ける職場の数に対して薬剤師が増えすぎていることです。
薬学部を設置する大学が増え、毎年1万人以上の新人薬剤師が誕生しています。一方で、人口減少により処方せんの発行枚数は減り続けています。
厚生労働省のデータによると、2045年には薬剤師が約12万人余る見込みです。都市部ではすでに人員が充足し、希望の条件で転職することは難しくなりました。
ドラッグストアでは登録販売者がOTC医薬品を販売できるようになり、「薬剤師でなければできない仕事」は確実に減っています。
かつては薬剤師が職場を選ぶ時代でした。しかしいまは、雇用側があなたを選ぶ時代に変わりつつあります。
AIやテクノロジーの進化で仕事が消えていく

調剤ロボットやAIシステムは、人間より正確かつ迅速に作業をこなします。すでに以下の業務は自動化が進んでいます。
- 調剤・ピッキング
- シロップ薬の混合調剤
- 抗がん剤のミキシング
- 一包化の鑑査補助
- 薬の量の確認・鑑査補助
電子処方箋やデータ管理システムの導入で事務作業が効率化した結果、薬局に必要な薬剤師の人数は減りました。
単純作業しかできない薬剤師は、真っ先に「不要」と判断される時代です。
診療報酬や法改正の影響で稼ぎにくい
国の制度変更や医療費削減の波は、薬剤師の給与にも直撃しています。薬価の引き下げで薬局の経営は厳しくなり、昇給やボーナスは期待しにくい状況です。
24時間対応や服薬フォローの義務化で業務負担は増える一方、収入は上がらない。この構造が続く限り、「頑張っても報われない」と感じる薬剤師は増え続けるでしょう。
速報:2026年度診療報酬改定について
診療報酬本体は12年ぶりのプラス改定(+3.09%)でしたが、薬価は▲0.86%と引き下げが決定しました。
» 診療報酬改定について|厚生労働省
薬価の引き下げで製薬会社や医薬品卸・調剤薬局の経営はさらに厳しくなるのが目に見えています。
薬剤師はオワコンではないと言える3つの理由

ここまで厳しい現実を伝えてきました。ですが、悲観する必要はありません。
以上の3つの理由から、薬剤師の需要は今後も続きます。
高齢化社会ほど薬剤師の専門性が高まる
日本の高齢化は止まりません。医療や医薬品を必要とする人は増え続けます。
特に高齢者は複数の薬を服用するケースが多く、飲み合わせの確認や副作用の管理には、薬剤師の専門知識が欠かせません。
AIやデジタル技術が単純作業を代替する分、薬剤師には「患者一人ひとりに合わせた服薬指導」という、より高度な役割が求められています。
高血圧や糖尿病などの慢性疾患は、長期にわたる服薬管理が必要です。
服用状況の確認、副作用への対応、生活習慣に合わせた提案などetc..
こうした役割を担える薬剤師は、これからも医療現場で必要とされ続けます。
AIでは絶対にできない薬剤師の仕事がある

AIは計算やデータ整理が得意です。しかし、人の気持ちに寄り添ったり、場の空気を読んだりすることは決してできません。
あなたは患者の顔色、表情、声のトーン、しぐさから「何か様子がおかしい」と気づけます。データには表れない体や心の不調を感じ取れます。
認知症の高齢者や、薬を嫌がる子どもへの対応など、正解がない場面で柔軟に判断できるのも人間だけです。
薬効・副作用の有無の確認、医師や看護師との信頼関係の構築は、あなたにしかできない仕事です。
AIに任せられる作業はAIに任せ、あなたは「人にしかできない温かい対応」に集中する。そうすれば、専門職としてのあなたの市場価値は確実に高まります。
地域医療や在宅医療といった新しい活躍の場が増えている
薬剤師の仕事は「薬局で薬を渡す」だけではなくなりました。高齢化により病院や薬局へ通えない人が増え、患者の自宅を訪問して療養を支える役割が急速に広がっています。
患者宅で生活環境を直接確認すれば、飲み忘れた薬の整理、生活リズムに合わせた服薬提案、副作用や体調変化の早期発見が可能です。
医師や訪問看護師、ケアマネジャーと連携し、病状のコントロールや薬の調整を行う場面も増えています。
自宅で最期を迎えたい患者を支えるには、麻薬を使った疼痛コントロールなど、高度な医療の知識が必要です。
AIがどれだけ進化しても、患者の心に寄り添うことはできません。地域・在宅医療への関わりが、あなたの価値をさらに高めます。
オワコン薬剤師になる人の3つの特徴
業界が厳しくなっても、すべての薬剤師がオワコン化するわけではありません。ですが、以下の特徴に当てはまる薬剤師は、数年後に厳しい立場に置かれる可能性が高いです。
調剤業務だけをこなし、患者対応を避けている
あなたは、ピッキングや鑑査など、調剤作業だけを黙々とこなしていませんか?その仕事は、AIや調剤ロボットに奪われつつあります。
患者から「あなたに相談してよかった」と言われる薬剤師は、調剤の正確さだけでなく、患者との対話を大切にしています。
投薬カウンターでの数分間を「作業」と捉えるか、「信頼構築の機会」と捉えるか。この意識の差が、5年後のキャリアを決定的に分けます。
「医療従事者」としての経験を積める環境にいない
残念ながら、すべての職場で医療従事者としての経験が積めるわけではありません。
医師や看護師と連携する機会がない。在宅医療に関わるチャンスがない。処方せんを受け取って薬を渡すだけの毎日。こうした環境では、薬剤師としての成長に限界があります。
特にドラッグストア勤務の場合、OTC販売やレジ業務が中心となり、医療従事者としてのスキルを磨く機会が少ないのが現実です。
店舗運営や売上管理のスキルは身に付きますが、「医療従事者としての薬剤師」の市場価値とは別物です。
いまの職場で「医療従事者として成長できているか」を冷静に振り返ってください。答えがNoなら、環境を変えることを真剣に検討すべきです。
現状に不満を感じながらも行動を起こさない
「このままじゃまずい」と感じながら、忙しさを言い訳に何も変えない。そんな薬剤師が、実は一番危険です。
年齢が上がるほど転職のハードルは高くなります。20〜30代のうちに環境を変える決断ができるかどうかが、5年後・10年後のキャリアを大きく左右します。
「もう少し様子を見よう」「今は忙しいから」と先延ばしにしているうちに、気づけば30代後半、40代になっていた…
と、いう薬剤師は少なくありません。動くなら、早いほうがいい。これは転職市場の事実でもあります。
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必要とされ続ける薬剤師になるための3つのポイント

厳しい時代を生き抜くために欠かせない3つのポイントは以下のとおりです。
学び続けて専門性を高める
5年後も医療従事者として必要とされる薬剤師でいたいなら、学び続けるしかありません。立ち止まった瞬間、あなたの市場価値は下がり始めます。
周りと差をつけるには、以下のようなスキルや資格が武器になります。
- がんや感染症など特定領域に特化した専門薬剤師
- 患者から指名されるかかりつけ薬剤師
- 在宅医療で活かせるプライマリ・ケア認定薬剤師
特定分野に精通すれば、AIにはできない高度な判断や医師への提案が可能です。eラーニングやオンライン研修を活用すれば自宅で学び続けられます。知識の空白期間を作らず、継続して学ぶことが将来の安定した働き方につながります。
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コミュニケーションスキルを武器にする

機械化が進む時代だからこそ、「相手の気持ちに寄り添う力」が最大の武器になります。
薬剤師の仕事は「薬を渡すこと」から「人と向き合うこと」へ変化しています。患者は薬の説明だけでなく、共感を求めています。どれだけ知識があっても、話を丁寧に聞かなければ信頼は得られません。
磨くべきコミュニケーションスキルは、以下の4つです。
- 聞く力
- 相手の言葉の裏にある気持ちを理解する
- 伝える力
- 専門用語を使わず、わかりやすく説明する
- 調整する力
- 医師や介護スタッフとの連携を円滑に行う
- 支える力
- 患者が前向きに治療へ取り組めるよう導く
この4つを磨いた薬剤師だけが、患者から「あなたに相談したい」と指名されます。
デジタルリテラシーを身につける
新しいシステムに対応できない薬剤師は、真っ先に「時代遅れ」のレッテルを貼られてしまいます。
今の薬剤師に求められるデジタルスキルは、以下のとおりです。
- 電子処方箋やマイナンバーカードを使った受付・確認
- ビデオ通話ツールでのオンライン服薬指導
- AI搭載の監査システムや自動調剤機の操作
- チャットアプリを使った医師・ケアマネジャーとの情報共有
機械やAIを「仕事を奪う敵」と考える必要はありません。デジタルに単純作業を任せれば、あなたは患者と向き合う時間を確保でき、医療の質を高められます。
ITスキルを身に付けた薬剤師は、転職市場で「変化に強い人材」として高く評価されます。
オワコンを回避する薬剤師のキャリアモデル5選

「生き残れる薬剤師」になるための具体的なキャリアパスを5つ紹介します。あなたの状況に合った選択肢を見つけてください。
調剤薬局から製薬会社へ転職
調剤薬局で培った知識を活かしつつ、新しいスキルを身に付けたいなら、製薬会社への転職が有力な選択肢です。
薬剤師経験を活かせる製薬会社の職種は以下のとおりです。
- MR職
- CRA職
- DI職
大手製薬会社では勤務時間や場所を柔軟に選べる制度が整っており、ワークライフバランスを重視する薬剤師にも適しています。
ただし、異業種への転職は年齢が上がるほど難しくなります。興味があるなら、20〜30代前半のうちに動きましょう。
下記リンク記事は、CRAを経験したaikoさんにインタビューです。ぜひ合わせてご覧下さい。
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病院薬剤師から在宅薬局へ転職

病院で培った経験は、在宅医療の現場で即戦力として高く評価されます。注射薬の知識やチーム医療の経験は、そのまま武器になります。
在宅薬局への転職は、以下のメリットがあります。
在宅薬局転職のメリット
- 病院で培った医師・看護師との連携スキルが活かせる
- 需要が高く、給与アップを狙える
- 患者の生活に深く関わり、AIにはできない対応力を磨ける
在宅医療の現場では、ワークライフバランスを保ちながら専門性を磨き、安定したキャリアを築けます。
ドラッグストアから病院へ転職

厳しい現実ですが、ドラッグストアの経験は、医療従事者としてのキャリアに直結しにくいです。
OTC販売やレジ業務、店舗運営がメインとなり、医師や看護師と連携する機会はほとんどありません。
だからこそ、ドラッグストア勤務の薬剤師が「医療従事者」として生き残るには、病院へ転職して経験を積むことが有効です。
病院薬剤師として働くと、以下のスキルや経験が身に付きます。
- 注射薬の調製や無菌調剤など専門性の高い業務
- 医師・看護師とのチーム医療の経験
- 病棟業務を通じた患者との深い関わり
- がんや感染症など専門領域の知識
病院で「医療従事者」としての土台を築けば、その後のキャリアの選択肢は大きく広がります。
そのまま病院でキャリアを積むもよし、在宅医療に強い薬局へ転職するもよし。「医療従事者」と胸を張って名乗れる薬剤師になれば、あなたがオワコン化することはありません。
ドラッグストアから病院への転職は、20代のうちに動くほど有利です。年齢が上がると未経験での採用は難しくなります。興味があるなら、今すぐ情しょう。
病院転職でも年収アップを実現
副業・起業でキャリアを複線化する
職場に依存しない。これが、不安定な時代を生き抜く鉄則です。
薬剤師の資格を活かした副業・起業の例
メディカルライター、薬学講師、ブログ・SNSでの情報発信、医療翻訳など。
在宅ワークなら隙間時間を活用でき、本業を続けながらスキルを維持・拡大できます。
副業や起業を始めるときは、いきなり会社を辞めず、週末や空き時間からスタートしましょう。
小さく始めて、軌道に乗ったら本格化する。これがリスクを最小限に抑えるコツです。会社を辞めず、週末の活動から始めてみてください。
下記リンク記事では、薬剤師におすすめの副業を紹介しています。ぜひ合わせてご覧下さい。
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薬剤師におすすめの副業7選!始める際の注意点や成功させるポイントを解説
非医療分野で薬剤師として活躍する
薬剤師は病院や調剤薬局だけでなく、ライフスタイルや興味に合わせて以下の分野でキャリアを広げられます。
| 分野 | 主な職種 | 特徴 |
| 一般企業 | 化粧品メーカー(商品開発) 食品メーカー(品質管理) 薬事担当(広告・表示内容の確認) | 化学や衛生の知識を直接生かせる。 薬事は専門性が高く、長期的に活躍できる。 |
| 在宅・IT分野 | メディカルライター 医療系IT企業(電子カルテ・システム開発) | 在宅勤務が可能で働きやすい。 デジタル化に対応した将来性のある分野。 |
| 安定志向の職場 | 公務員薬剤師 | 土日休みで定時に帰りやすく、安定して働ける。 |
| 教育・地域貢献 | 予備校講師 | 教育や地域の衛生管理に関わり、社会貢献度が高い。 |
自分の強みや生活に合った働き方を選ぶと、安定した収入と成長の両方を実現できます。
薬剤師はオワコンなのかに関するよくある質問

薬剤師はオワコンと言われる理由や将来のキャリアについて、よくある質問をまとめました。
いまの職場にいても将来性はある?
薬剤師以下のポイントに当てはまるなら、将来性のある職場といえます。
- 在宅医療やかかりつけ薬剤師に積極的に取り組んでいる
- 電子処方箋など新システムの導入を進めている
- 資格取得支援や研修制度が整っている
- 地域の医療機関と連携している
逆に、同じ作業ばかりで成長を実感できないなら、転職を考えるタイミングです。経営悪化や店舗縮小の噂がある職場は、雇用が不安定になるため要注意です。
AIに仕事を奪われないためにできることは?

「人にしかできない対応」を強化しつつ、AIを上手に活用する。この両輪が大切です。
具体的には、以下の対策を実行してください。
AIに仕事を奪われないために..
- 患者の不安や生活背景を理解する会話力を磨く
- 在宅医療やチーム医療など、人との連携が必要な現場に積極的に関わる
- AIやロボットを「便利な道具」として使いこなす
- 専門資格を取得し、AIでは判断できない領域に対応する力を身に付ける
- 薬の説明だけでなく、健康相談や生活サポートまで行う
患者さんはもちろん、医師や医療スタッフから信頼される薬剤師を目指すこと。温かみと専門性を両立させることが、AI時代を生き抜くポイントです。
生き残るための転職で意識すべきことは?
転職先を選ぶときは、以下のポイントをチェックしてください。
転職先を選ぶときのポイント
- 在宅医療やかかりつけ機能への取り組み
- 認定薬剤師の取得支援や教育制度
- 休みの取りやすさやワークライフバランス
- 「人との会話」や「専門知識」を評価する文化
求人票だけでは、職場の雰囲気や実際の忙しさはわかりません。
薬剤師専門の転職エージェントを利用すれば、非公開求人の紹介や職場のリアルな情報を教えてもらえます。一人で探すより、確実に良い職場に出会えます。
まずは無料相談から
まとめ:行動した人だけが「生き残る薬剤師」になれる

薬剤師業界が厳しい方向に向かっているのは事実です。しかし、医療の需要がゼロになることはなく、時代に対応できる薬剤師の価値はむしろ高まっています。
生き残れる薬剤師になるために最も重要なのは、いまの環境があなたを『医療従事者』として成長させてくれるかどうかを見極めることです。
以下に当てはまるなら、環境を変えることを真剣に検討してください。
- 同じ作業の繰り返しで、成長を感じられない
- 医師や看護師と連携する機会がない
- 在宅医療や専門性を磨くチャンスがない
「このままじゃまずい」と感じた今こそ、行動を起こすタイミングです。先延ばしにすればするほど、選択肢は狭まります。
薬剤師専門の転職エージェントを活用すれば、「生き残れる薬剤師」になれる職場を効率的に探せます。非公開求人の紹介や、職場のリアルな情報を教えてもらえるため、一人で探すより確実です。
あなたの5年後、10年後は、今日の決断で決まります。
まずは無料相談から

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