
薬剤師の仕事は薬局や病院での対面業務が中心で、リモートワークは難しいと感じていませんか?柔軟な働き方ができず、子育てや介護との両立に悩む薬剤師は多くいます。
この記事では薬剤師の資格を生かしてリモートワークができる職種や、リモートワークのメリット・デメリットを解説します。
この記事を記事を読めば、薬剤師の資格を生かしたリモートワークでの働き方がわかり、子育てや介護と仕事の両立が可能です。
薬剤師の専門知識を生かせるリモートワークの求人は増加傾向にあります。オンライン服薬指導やメディカルライターなど、現場以外の多様な働き方で薬剤師としてのキャリアの継続が可能です。
薬剤師のリモートワークは可能か?

薬剤師のリモートワークは可能です。調剤などの薬を直接扱う業務をリモートで行うことは難しいものの、薬剤師の専門知識を生かせるリモートワークは増加しています。
2020年の法改正により、薬剤師によるオンライン服薬指導が法的に認められました。一定の条件を満たせば、薬剤師は自宅から患者さんとビデオ通話でのやりとりが可能です。医薬品情報の提供や薬歴の管理、薬事申請関連業務などはパソコンとネット環境があればリモートでも対応できます。
薬剤師の資格を生かしてリモートワークができる職種6選

薬剤師の資格を生かしてリモートワークができる主な職種は、以下のとおりです。
- オンライン服薬指導
- 医薬品情報業務(DI業務)
- メディカルライター
- 薬剤関連の翻訳・校正
- 医薬品関連の問い合わせ対応
- 治験に関する書類の作成
オンライン服薬指導
オンライン服薬指導は薬剤師の資格を生かして在宅で働ける新しい働き方です。オンライン服薬指導ではパソコンやスマートフォンのビデオ通話機能を使い、薬剤師が患者さんに薬の説明や服薬指導を行います。薬は患者さんの自宅へ直接配送されるため、調剤や在庫管理などの物理的な作業はありません。
オンライン服薬指導の求人の多くは薬剤師資格と調剤薬局での実務経験が必須です。画面越しの対応になるため、オンライン服薬指導には対面以上に丁寧なコミュニケーションスキルが求められます。
オンライン服薬指導はフルリモートワークが可能な求人が多く、シフト制で柔軟な働き方が可能です。子育てや介護と両立しやすいため、オンライン服薬指導は育休や介護休暇中の薬剤師の復職先としても人気があります。
医薬品情報業務(DI業務)

医薬品情報業務(DI業務)は製薬会社などで医薬品の情報を専門に扱う業務です。薬剤師は医薬品の知識を生かし、医療従事者や患者さんからの問い合わせに正確に回答できます。医薬品情報業務の主な仕事内容は以下のとおりです。
- 医薬品に関する問い合わせ対応
- 副作用情報の収集や管理
- 研修資料やFAQの作成
医薬品情報業務はパソコンと通信環境があれば完結できる内容が多く、リモートワークと相性の良い仕事です。未経験から挑戦できて調剤や服薬指導以外のスキルも身に付くため、医薬品情報業務はキャリアチェンジを目指す薬剤師に人気です。
メディカルライター
メディカルライターは医薬品や医療に関する文章を作成する仕事です。薬剤師は薬学の知識や論文を読むスキルを生かし、専門的な文章を作成できます。メディカルライターが担当する主な文章は以下のとおりです。
- 製品情報の概要
- 医薬品の添付文書
- 医療系Webサイトの記事
- 治験関連文書
メディカルライターには情報を正確かつわかりやすく伝える文章作成能力が求められます。パソコンと通信環境があれば自宅で仕事が完結するため、メディカルライターはリモートワークと相性が良い仕事です。納期を守れば自分のペースで働けるので、メディカルライターは子育てや家事との両立がしやすい働き方です。
薬剤関連の翻訳・校正

薬剤関連の翻訳・校正の仕事は文書を正確に理解するうえで薬剤師としての経験や専門知識を生かせます。薬剤関連の翻訳・校正の仕事で扱う文書の例は以下のとおりです。
- 医薬品の添付文書
- 学術論文
- 治験関連文書
薬剤関連の翻訳・校正の仕事は薬に関する深い知識や英語力などの高い語学力が求められます。翻訳の経験がない場合は、翻訳された文章に間違いがないかをチェックする校正業務から始めると安心です。薬剤関連の翻訳・校正の仕事は業務の多くがリモートで完結するので、自分のペースで仕事を進めたい薬剤師におすすめです。
医薬品関連の問い合わせ対応
医薬品関連の問い合わせ対応業務は、製薬会社やドラッグストアのコールセンターでお客様の質問に答える仕事です。正確な情報をわかりやすく伝える力や基本的なパソコンスキルが医薬品関連の問い合わせ対応業務には必要です。
医薬品関連の問い合わせ対応業務では、薬剤師の専門性を生かして一般の方や医療機関のスタッフから寄せられる以下の質問に答えます。
- 薬の使い方や飲む量
- 薬の副作用
- 他の薬との飲み合わせ
医薬品関連の問い合わせ対応業務の魅力はフルリモートワークの求人が多く、働く場所を選ばない点です。勤務時間を柔軟に調整できるため、医薬品関連の問い合わせ対応業務は子育てや介護との両立を目指す薬剤師にもおすすめできます。
研修制度やマニュアルが整っているため、医薬品関連の問い合わせ対応業務はブランクのある薬剤師でも挑戦しやすい仕事です。
治験に関する書類の作成
新しい薬を世に出すための「治験」には専門的な書類作りが欠かせません。治験に関する書類を作る際は薬学の知識やGCP(※)などの法律知識が必要なため、薬剤師としての経験が直接役立ちます。社会貢献度の高い仕事に携わり、薬剤師としての専門性を高められる点が治験に関する書類の作成業務の魅力です。
製薬会社やCRO(医薬品開発業務受託機関)に所属し、治験に必要な以下の専門文書の作成や改訂を担当します。
- 治験実施計画書
- 同意説明文書
- 治験薬概要書
治験に関する書類はパソコンで作成できるため、リモートワークやハイブリッド勤務などの柔軟な働き方が可能です。外資系企業の場合は海外申請用の書類作成のためにビジネスレベルの英語力が求められます。
CRA(臨床開発モニター)やCRC(治験コーディネーター)から治験に関する書類の作成業務にキャリアチェンジする薬剤師は多くいます。治験に関する書類の作成業務は未経験からの挑戦も可能です。
※ GCPとは医薬品の臨床試験に関するルールのことを指します。
薬剤師がリモートワークをする4つのメリット

薬剤師がリモートワークをするメリットは以下のとおりです。
- 場所に縛られず、柔軟な働き方ができる
- 家族との時間を確保しやすい
- 職場の人間関係のストレスが生じにくい
- 薬剤師と他のスキルの掛け合わせでキャリアを拡張できる
場所に縛られず、柔軟な働き方ができる
薬剤師がリモートワークをする際の大きな魅力は、働く場所や時間の制約から解放される点です。薬剤師がリモートワークを活用すると、パートナーの転勤や親の介護などの事情で引っ越しても仕事を続けやすくなります。
リモートワークを始めると満員電車などの通勤ストレスから解放され、通勤時間の有効活用が可能です。リモートワークはフルタイムだけでなく時短勤務や週数日だけ働くなど、生活に合わせて働き方を選べます。
家族との時間を確保しやすい
薬剤師がリモートワークをすると働く時間や場所の自由度が高まるので、以下のように家事や育児と仕事を両立しやすくなります。
- 子どもの送迎ができる
- 子どもの学校行事に参加できる
- 子どもの急な体調不良に対応できる
- 仕事の合間に家事ができる
家族の状況に合わせて勤務時間や休日を調整できるため、リモートワークは仕事と家庭のバランスを取りたい薬剤師に最適です。
職場の人間関係のストレスが生じにくい

薬剤師がリモートワークをすると職場の人と直接顔を合わせる機会が減るため、人間関係の悩みが自然と少なくなります。物理的な距離があることで、余計な気遣いをせずに済む点はリモートワークの大きなメリットです。
コミュニケーションは主に文字でのやりとりのため、リモートワークでは感情的なぶつかり合いも起こりにくくなります。リモートワークでは業務外の付き合いが不要なため、薬剤師の仕事に集中できます。
薬剤師と他のスキルの掛け合わせでキャリアを拡張できる
リモートワークにより通勤時間がなくなると、新しいスキルを習得する時間の余裕が生まれます。以下のスキルを習得すると、薬剤師としてのキャリアの拡張に効果的です。
- ライティングスキル
- マーケティングスキル
- ITスキル
- 語学力
薬剤師がライティングスキルを身に付けると、メディカルライターやWebサイトの記事を監修する仕事に挑戦できます。マーケティングやITスキルのある薬剤師は、ヘルスケア関連のIT企業や製薬会社のマーケティング部門で専門性を発揮できます。
英語が得意な薬剤師の場合は医薬品に関する文書の翻訳や外資系企業で働く道もおすすめです。薬剤師としての市場価値が向上すれば独立してフリーランスになるなど、より自分らしい働き方を選べます。
薬剤師がリモートワークをする4つのデメリット

薬剤師がリモートワークをするデメリットは以下のとおりです。
- 調剤業務と比較すると時給単価は低い傾向がある
- 職場との情報共有やコミュニケーションに工夫がいる
- セキュリティ・プライバシーの確保に工夫がいる
- 現場感覚から離れることで復帰しにくくなる可能性がある
調剤業務と比較すると時給単価は低い傾向がある
薬剤師のリモートワークは資格が必須ではない業務も含まれるため、調剤業務よりも専門性が低く時給単価も低い傾向にあります。薬剤師のリモートワークは希望者が多い一方、求人数が少ないことも時給単価が上がりにくい要因です。
未経験から始められるリモートワークの場合、最初は実績作りのため低い時給単価でスタートすることも多くあります。
» 薬剤師の年収を地域別、年齢別、男女別、職場別に解説!
職場との情報共有やコミュニケーションに工夫がいる
薬剤師がリモートワークを円滑に進めるには職場との情報共有やコミュニケーションに工夫が必要です。
リモートワークはメールやチャットなど、テキスト中心のコミュニケーションが多くなります。メールやチャットでは細かなニュアンスが伝わらず、業務連絡以外の雑談も減ってしまいます。気軽に質問や相談ができないリモートワークの環境は業務効率が低下しやすい点がデメリットです。
セキュリティ・プライバシーの確保に工夫がいる

薬剤師がリモートワークをする際は患者さんのセキュリティやプライバシーを守るために、厳格な情報管理が必要です。薬剤師は患者さんの個人情報や新薬のデータなど、外部に漏れてはいけない重要な情報を扱います。家族と過ごす自宅でリモートワークをする場合は情報が漏れるリスクが高まるため、細心の注意が必要です。
薬剤師がリモートワークをする際に必要なセキュリティ・プライバシーの対策は以下のとおりです。
- 家族によるパソコンの誤操作を防ぐ
- 画面の覗き見や音声の聞き取りを防ぐ
- 安全な通信環境を確保する
- パソコンや重要書類を鍵付きの個室やキャビネットで保管する
- 機密書類はシュレッダーで処分する
リモートワークで安全な通信環境を保つためには、会社指定のVPN接続やセキュリティソフトの導入が必要です。
現場感覚から離れることで復帰しにくくなる可能性がある
リモートワークで現場から離れると薬剤師としての感覚が鈍り、薬局や病院へ復帰する際のハードルが高くなる可能性があります。医療の世界は日々進歩し、薬の情報や国の制度も常に新しく変わっていきます。現場で業務に触れていない薬剤師が業界の変化に追いつくことは困難です。
薬剤師がリモートワークを続けると患者さんや医師と対面する機会が減り、コミュニケーションスキルが低下する場合もあります。
薬剤師がリモートワークの仕事を探す方法

薬剤師がリモートワークの仕事を探す方法は以下のとおりです。
- 一般の求人サイト
- 転職エージェント
- アウトソーシングサービス
一般の求人サイト
Indeedや求人ボックスなどの求人サイトは求人件数が多く、幅広い選択肢から薬剤師向けのリモートワークの仕事を探せます。
薬剤師が求人サイトで仕事を探す際は「薬剤師」と「リモートワーク」や「在宅」など、キーワードを組み合わせて検索しましょう。「オンライン服薬指導」や「メディカルライター」などの具体的な職種名で検索する方法もおすすめです。
新着求人を知らせるアラート機能を使えば、薬剤師向けのリモートワークの求人情報を効率的に収集できます。一般の求人サイトは薬剤師専門のサイトではないため、薬剤師とは関係のない求人が表示される場合もあります。
「リモート相談可」や「一部在宅」など、フルリモートワークではない求人もあるため、応募前によく確認しましょう。
転職エージェント

薬剤師業界に詳しい転職エージェントを利用すると、リモートワークの仕事を効率良く探せます。転職エージェントでは専門のキャリアアドバイザーが薬剤師の転職活動を全面的にサポートします。キャリアアドバイザーから受けられるサポート内容は以下のとおりです。
- 働き方の相談
- キャリアプランの提案
- 履歴書・職務経歴書の添削
- 面接対策
- 企業・業界の情報提供
転職エージェントを利用すると、一般の求人サイトに載っていない非公開求人や貴重なリモートワーク案件の紹介を受けられます。複数の転職エージェントに登録し、担当者との相性を見ながら薬剤師向けのリモートワークの情報を多角的に集めましょう。
アウトソーシングサービス
自分のペースで柔軟に働きたい薬剤師にはアウトソーシングサービスの利用がおすすめです。アウトソーシングサービスには薬剤師の専門知識を生かせる単発や短期間の仕事が多くあります。アウトソーシングサービスを利用すると、育児や本業の隙間時間の有効活用が可能です。
ランサーズやクラウドワークスなどのアウトソーシングサービスのサイトでは、薬剤師向けに以下の仕事が募集されています。
- メディカルライター
- 医療系記事の監修
- 医薬品情報業務の補助
アウトソーシングサービスでは企業と直接契約を結ぶため、報酬や仕事の進め方などの条件交渉は自分で行う必要があります。
アウトソーシングサービスでは「週に数時間だけ」や「1案件だけ」などの働き方ができるリモートワーク案件が豊富です。未経験でもリモートワークに挑戦できる仕事もあるので、アウトソーシングサービスは実績作りの第一歩としてもおすすめです。
現場にとらわれない働き方で、自分らしいキャリアを築こう

薬剤師は薬局や病院だけでなく、リモートワークでも活躍できます。リモートワークを活用すると、育児や介護でキャリアが中断した薬剤師も専門知識を生かして在宅で働けます。薬剤師の資格にライティングや語学などのスキルを組み合わせることで、薬剤師として新しいキャリアの構築が可能です。
求人サイトや転職エージェントを活用してリモートワークに挑戦し、自分らしいキャリアを築きましょう。
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