

在宅薬剤師って、具体的に何をしているんだろう?
調剤薬局との違いがイメージしにくいという声をよく聞きます。僕自身、転職前は「在宅=薬を届けるだけ」だと思っていました。
でも、実際は全然違いました。
在宅薬剤師の仕事をひと言で表すなら、「関わる人がグッと増える」。患者さんだけでなく、医師・看護師・ケアマネ・リハスタッフ・ご家族と日常的にやり取りするのが、調剤薬局との最大の違いです。
この記事では、在宅薬局の管理薬剤師として働く僕の1日を通じて、在宅薬剤師の仕事内容をリアルにお伝えします。
この記事でわかること
- 在宅薬剤師の1日のスケジュール
- 訪問先で実際にやること
- 調剤薬局との仕事内容の違い
- 関わる多職種と連携の実態
- 在宅ならではの「きつい場面」と「やりがい」
在宅薬剤師の1日のスケジュール

在宅薬局で働く、僕の1日の業務スケジュールを紹介します。
僕の薬局は薬剤師3名体制で、施設約15か所+個人宅約20名を担当しています。
1日の処方せん受付枚数は、70〜120枚ほど。そのうち、およそ半分は施設・在宅患者の処方せんです。
在宅業務は、ほぼ僕一人で担当しているので、午前中は訪問、午後は施設の調剤と外来をこなす毎日です。
調剤薬局との一番の違いは、薬局の中だけで仕事が完結しないこと。

ほぼ外回りで1日の業務が終わることもあります。
訪問先で実際にやること

在宅訪問は「薬を届ける」だけではありません。患者さんの自宅にお邪魔して、以下のことを行います。
個人宅への訪問
調剤薬局では「薬をお渡しして終わり」となりがちですが、在宅では患者さんの生活の中に入り込んで、薬以外のことにも気を配る必要があります。
たとえば、前回の訪問では部屋がキレイだったのに、今回はなんだか散らかっている。本人もなんだか元気がない。
もしかしたら、何らかの病気が進行している影響かもしれません。

そういう小さな変化に気づけるのは、患者さんの家に実際に足を運んでいるからです。
施設への対応
施設(有料老人ホーム、特別養護老人ホームなど)は個人宅と少し違います。

患者さんともお話ししますが、メインは施設の看護師やヘルパーさんとのやり取りです。
施設によって異なりますが、調剤した薬は配薬カートにセットしたり、患者さんに直接渡したりします。
施設は個人宅に比べて定型業務が多いですが、入所者の方は70〜80代で高血圧・脳血管疾患・糖尿病・パーキンソン病など複数の疾患を抱えていることがほとんど。
薬の種類も多く、一包化や簡易懸濁、注射の知識などが求められます。
調剤薬局との仕事内容の違い

調剤薬局と在宅薬局、何が違うのか。3つのポイントで整理します。
1. 関わる人の数が圧倒的に違う
| 在宅薬局 | 調剤薬局 |
|---|---|
| 患者さん+ご家族 医師・看護師・ケアマネ・リハスタッフ 施設の看護師・介護士など | 患者さん 門前の医師(疑義照会がメイン) 薬局内のスタッフ |
調剤薬局では、基本的に患者さんと薬局スタッフだけの世界です。在宅では、1人の患者さんに対して数人〜数十人の多職種が関わります。
2. 求められるスキルの幅が違う
調剤薬局では処方鑑査・調剤・投薬のスキルが中心です。在宅では、それに加えて以下のスキルが求められます。
- 多職種とのコミュニケーション力 — 電話やチャットで日常的に連携
- 在宅特有の調剤報酬の知識 — 居宅療養管理指導、各種加算の算定ルール
- 生活環境を踏まえた服薬指導 — 薬局の中では見えない情報が多い
- 終末期ケアへの対応 — 看取りに関わることもある
3. 仕事のフィードバックの質が違う
調剤薬局では、正直なところ「ありがとう」と言われる機会は多くありません。でも在宅では、患者さんだけでなく医師や看護師から「助かりました」と言ってもらえる場面が格段に増えます。

僕には、忘れられないエピソードがあります。
ある日の夜中、看取り段階のがん患者さんが急変したとき、担当医師から「麻薬を処方したい」と電話がかかってきました。
僕はすぐに対応し、麻薬による疼痛コントロールが開始できたことで、ご家族からも医師からも感謝の言葉をもらいました。
「役に立てて良かったな」と心から思える瞬間。これは調剤薬局ではなかなか味わえません。
在宅薬剤師が関わる多職種と連携の実態

在宅医療はチーム医療です。僕が日常的に連携する職種を紹介します。
連携手段は電話やチャットが中心です。在宅のケアマネ会議に出席することもありますが、訪問診療に毎回同行するわけではありません。
ただ、病院のようにナースステーションで顔を合わせる機会がないぶん、自分から積極的に情報を発信する姿勢が大切です。
報告書を丁寧に書く、変化があればすぐに電話する。こうした小さな積み重ねが、チームからの信頼につながります。
在宅ならではの「きつい場面」

きれいごとばかりでは伝わらないので、正直にきつい場面も書きます。
看取りへの対応
個人宅では寝たきりや末期がんの方の看取りに関わることがあります。患者さんの最期に立ち会う仕事は、精神的な負担がゼロではありません。
ただ、「この方の最後の時間を少しでも良くできた」と思えたとき、薬剤師としての存在意義を一番強く感じるのも事実です。
在宅業務に理解のある仲間がいない
僕の薬局では、在宅業務はほぼ僕一人で担当しています。他のスタッフは外来中心なので、在宅業務に対する温度差を感じることがあります。
在宅医療に興味のある仲間がいない孤独感。これは正直、しんどい部分です。
でも、在宅業務そのものにはやりがいを感じている。「医療者らしく働けている」という感覚が、今の僕を支えてくれています。
まとめ:在宅薬剤師の仕事は「薬局の外に出る」ことから始まる

在宅薬剤師の仕事内容は、調剤薬局の延長線上にありながら、関わる人の数も、求められるスキルも、得られるフィードバックの質も大きく違います。
楽な仕事ではありません。看取りに関わることもあれば、一人で在宅業務を回す孤独感もある。でも、「医療者として頼りにされている」と実感できる仕事です。
もしあなたが調剤薬局の仕事にモヤモヤを感じているなら、在宅薬剤師という働き方を知っておいて損はありません。
「どんな求人があるんだろう?」と気になった方は、僕が実際に使った転職エージェントの体験談も参考にしてみてください。

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