

調剤ミスをしてしまった。明日から調剤台に立つのが怖い。もう薬剤師を辞めたい……。
ミスをした日の夜は、何度も同じ場面を思い出してしまうものです。「また間違えたらどうしよう」と考えるだけで、出勤するのがつらくなる方もいると思います。ミスのプレッシャーで、薬剤師という仕事そのものが嫌になってしまうこともあるかもしれません。
僕も新人のとき、調剤事故(調剤過誤)を起こしました。薬剤師になって10年、公立病院・調剤薬局・個人病院・在宅薬局と4種類の職場で働き、いまは在宅薬局で管理薬剤師をしています。
先に、僕の答えをお伝えします。ミスが怖いのは当たり前です。でも、ミスを理由に薬剤師を辞めるのは、もったいないと思っています。
この記事でわかること
- 新人の僕が起こした調剤事故と、そのときの上司の言葉
- 調剤ミスをしたら、まずやること3つ
- ミスを糧にするために、僕が変えた習慣
- 4種類の職場で働いても、怖さが消えなかった話
- 辞めたい理由がミスではなく職場にあるときの考え方
調剤ミスの体験談|新人の僕が起こしたシロップの取り違え
まずは、僕自身の調剤事故の話をします。新卒で入った公立病院での出来事です。

鉄剤とステロイドのシロップを取り違え
鉄剤のシロップを出すはずのところで、ステロイドのシロップを調剤してしまいました。
患者さんは1回だけ飲まれましたが、幸い、副作用などの体への影響は出ませんでした。
それでも、ミスに気づいた瞬間は血の気が引きました。本当に患者さんに悪い影響が出るかもしれない。その危険を、身をもって知った出来事です。
代わりに謝りに行ってくれた上司
救いだったのは、上司の対応でした。上司は僕の代わりに、患者さんと主治医のところへ謝りに行ってくれました。そして、こう言ってくれました。
「ミスは誰にでもあること。ただ、同じミスを繰り返さないために何をすべきか考えてみて」

この言葉に救われました。責めるのではなく、次にどうするかを考えさせてくれた言葉です。
調剤ミスをしたら|誠実に対応するためにやること3つ
ミスを起こしてしまったら、誠実に対応するしかありません。頭が真っ白になっても、やることは決まっています。

①すぐに報告する
気づいた時点で、すぐに上司や先輩に伝えてください。患者さんが飲む前に止められるか、飲んだあとならどう対応するか。動き出しが早いほど、患者さんを守れます。
「怒られたくない」「黙っていれば分からないかも」と思う気持ちは、誰にでもあると思います。でも、隠したミスは、あとでもっと大きな問題になって返ってきます。
②何が起きたかを書き残す
何を、どの薬と取り違えたのか。どの作業の途中だったのか。職場に決まった報告の書き方があれば、それに沿って事実だけを書き残しておくと、職場で再発を防ぐ話し合いをするときにも役に立ちます。
③ミスから目をそらさない
患者さんへの謝罪は、上司と相談しながら進めることになると思います。僕のときは上司が謝りに行ってくれましたが、自分のミスから目をそらさないことは、どの立場でも同じです。
調剤ミスは糧になる|事故のあと僕が変えた1つの習慣
あの事故は、10年たったいまでも忘れられません。でも、たとえミスを起こしても、それは自分の糧になります。僕にとっての糧は、1つの習慣でした。

ほかの作業を同時に進めない習慣
事故のあと、僕は調剤に取りかかったら、ほかの作業を同時に進めないと決めました。
電話を取りながら、別の処方を気にしながら薬を手に取る。新人のうちは、そうした「ながら作業」がどれだけ危ないか、まだ予測がつきません。僕もそうでした。
上司に言われた「同じミスを繰り返さないために何をすべきか」。その答えが、この習慣でした。

毎日の仕事に一生懸命取り組んで、失敗したら今後に生かす。それしかないと思っています。
調剤ミスの怖さは4種類の職場どこでも消えなかった|怖いと思えるうちは大丈夫
「職場を変えれば、この怖さは減るのでは」と考える方もいるかもしれません。僕の実感は違いました。

怖さが小さかった職場は0
4種類の職場の中で、いちばん怖さが大きかったのは、事故を起こした公立病院です。
では、怖さが小さかった職場はどこか。考えてみましたが、1つもありませんでした。薬を扱う仕事である以上、どの職場でも怖さは消えませんでした。
怖さと付き合いながら働く毎日
それでも続けてこられたのは、こう考えるようにしたからです。
怖いと思えるうちは大丈夫。
怖いと思うから、確認を省かずにすみます。怖さは、ミスを防ぐ側の気持ちでもあります。なくそうとするより、抱えたまま働くものだと思っています。
調剤ミスが怖くて辞めたいと思っている方に、先輩として言わせてください。ミスで逃げないでほしいと思います。
調剤ミスではなく職場がつらいなら|辞めるかどうかは別の話
ここまで、ミスを理由に薬剤師を辞めるのはもったいないとお伝えしてきました。ただ、辞めたい理由がミスではなく職場そのものにあるなら、話は別です。

ミスの怖さと職場のつらさの違い
たとえば、相談できる人がいない。人間関係が悪くて、ミスを責められるのがつらい。これはミスの怖さとは別の問題です。
ただ、ミスのあと眠れない・食べられない日が何日も続くなら、それは怖さとは別の、体と心の不調のサインかもしれません。そのときは、まず休むことと、医師に相談することを優先してください。
僕も個人病院では、薬剤師が僕ひとりになり、相談できる相手がいない時期がありました。そのときの話は、薬剤師を辞めたいと思ったらという記事に書いています。人間関係で迷っている方は、性格がきつい5人と働いた話も読んでみてください。
辞めたいのが薬剤師という仕事ではなく、いまの職場なら、その気持ちには従っていいと思っています。
次の職場は見学で確認
職場を変えると決めたなら、次の職場がどんな体制で調剤しているかは、見学で実際に見ておくのがいちばんです。当日に聞くとよいことは、6か所見学した経験から調剤薬局の見学で聞く質問にまとめました。
見学の段取りは、転職エージェントに任せることもできます。僕が2回使ってみた体験をまとめました。
調剤ミスが怖くて辞めたい薬剤師へのまとめ|ミスから逃げない
新人のときに調剤事故を起こした僕の経験から、ミスとの向き合い方をお伝えしました。
- 調剤ミスが怖いのは当たり前
- ミスをしたら、すぐ報告・事実を書き残す・ごまかさずに謝る
- ミスは糧になる。僕は「調剤に取りかかったら、ほかの作業を同時に進めない」と決めた
- 4種類の職場で働いても、怖さが小さかった職場はなかった
- 怖いと思えるうちは大丈夫
- 辞めたい理由がミスではなく職場なら、話は別
ミスをした直後は、自分を責める気持ちでいっぱいになると思います。でも、そこで誠実に対応して、次に生かせば、その経験は自分の力になります。

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